広域医療の手順を実践 災害時、陸自駐屯地を搬送拠点に 県病院、DMATなど

2024年05月27日

政治・行政

自衛隊救急車で搬送された患者役を、奄美駐屯地に設置されたSCUのテントへ運ぶ陸自隊員と県DMATの医師ら=26日、奄美市名瀬の奄美駐屯地

大規模災害時に、対応困難な重症患者を被災地外の医療施設へ移し治療する「広域医療搬送」。その中枢となるのがSCU(ステージング・ケア・ユニット)と呼ばれる臨時の医療拠点だ。重症度を見極め島外搬送の要否を判断したり、航空機で搬送する患者の救護処置をするなど離島の災害医療においても、搬送の中継点としてさまざまな役割が期待されている。

 

大雨、地震、津波を想定した今回の訓練では、標高約200メートルの陸上自衛隊奄美駐屯地(奄美市名瀬)にSCUを設置。県立大島病院救命救急センター長の中村健太郎医師(40)が全体指揮を執り、県の災害派遣医療チーム(DMAT)や地元消防など7機関35人が対応。同駐屯地の医官、看護師ら9人も加わり、SCUの役割分担や運用手順を確認した。

 

訓練では、情報収集し搬送先や搬送手段を割り振る「搬送調整部門」と、患者治療に当たる「診療部門」に分かれ対応。スターリンク衛星でつないだネットワークを活用し、オンラインの情報共有ファイルで同院や県のドクターヘリ調整部門、医療機関とも状況共有を図った。

 

重症患者や切迫早産の妊婦が病院から搬送されたほか、災害現場から直接運ばれた搬送先未定の患者も。医師らがトリアージ(治療の優先順位判定)を行い、島外搬送の要否を判断。駐屯地内の医務室も使用し診療に当たった。訓練ではSCUに運ばれた患者の半数を島外へ搬送することとなった。

 

中村医師は「奄美は医療機関のパワーも潤沢ではなく、早々に島外へ患者を搬送しなければならない。市街地が津波被害にあった場合、高台にある駐・分屯地は航空機が離着陸できる場所として、患者搬送やDMAT受け入れ、医療拠点など『唯一の窓口』になることが十分考えられる。国防のための駐屯地で守秘義務もあると思うが、災害時も非常に重要な拠点となることは間違いない」と強調。

 

「訓練を通じ自衛隊と顔が見える関係ができた。この駐屯地が唯一の拠点となる可能性を考えた上で、災害時に県としてどのように自衛隊と協調し、駐屯地を使用できるのか。今回の訓練を振り返り、災害が起こる前に検証していくことが大事だ」と語った。