自治体「冷静な判断を」 マイナンバーカード返納 奄美3市町でも7件

2023年07月16日

政治・行政

マイナンバーカードについて解説するリーフレット 個人情報の取り扱いに関連したトラブルが全国で確認されているマイナンバー制度を巡り、不安や不信感からカードを返納する動きが奄美群島でも出ている。今年4月以降、今月14日までに少なくとも奄美市と龍郷町、喜界町で計7件。トラブル発生の情報はなく、苦情や相談も特に増えてはいない。自治体によっては制度の仕組みやカードの中身に関する説明を強化。冷静な判断を求めている。

 

マイナンバーカードは個人を識別する12桁の数字(個人番号)と氏名、性別、住所、生年月日を記録した顔写真付きの身分証明書。本人確認書類や健康保険証として使えるほか、コンビニエンスストアやスーパーで住民票など各種証明書を取得する際にも有用だ。

 

総務省によると、6月末現在、人口に対するカード保有枚数率は全国70%。鹿児島県75.7%は宮崎県に次いで2番目に高い。奄美12市町村は宇検村82.3%を筆頭に知名町、龍郷町、大和村、奄美市までが県と同等以上。徳之島町60%が最も低い。

 

マイナンバーカードをめぐり、相次ぎ確認されているトラブルは▽コンビニで別人の証明書誤発行▽保険証と一体化した「マイナ保険証」に別人の情報ひも付け▽公金受取口座の誤登録▽カード発行・利用に伴う特典「マイナポイント」を別人に付与―といったもの。

 

こうした状況下、個人情報保護に関する不安や制度への不信感から、カードを返納する動きが全国で広がり、インターネット交流サイト(SNS)でも同調した投稿が続出。保有枚数に対する返納数と見れば少ないが、制度運用への疑義を示す行動と捉えられる。

 

カード返納の動きは奄美群島でも散見される。14日までに12市町村へ問い合わせたところ、不安や不信感に基づく返納は龍郷町で3件、奄美市と喜界町で各2件あったことが分かった。いずれも今年度、トラブルや返納に関する報道も影響したとみられる。

 

「カード返納は個人の自由だが、その意味は理解した上で判断してほしい」。奄美市は返納の動きを受け、新たな説明資料を作成。カード返納の希望に対し「連携した情報は削除されない」「情報がどう連携、活用されているかが確認できなくなる」と念押しする。

 

同市市民課の担当者によると、マイナンバーと連携した情報はシステム内部で分散管理(29項目)されており、カードはその一つ一つにアクセスするための「鍵」の役目を担う。カード自体に健康保険証や公金受取口座といった詳細な情報は記録されていない。

マイナンバーと連携した情報の活用履歴は専用サイト「マイナポータル」で確認できるが、アクセスするにはカードが欠かせない。各自治体窓口は「まずはサイトにアクセスし、情報が正しく登録、活用されているかを自分の目で見てほしい」と呼び掛けている。

 

相次ぐマイナンバー関連のトラブルは、主に情報を登録する際の人為的ミスが原因であり、国は今秋までに登録データの総点検を実施する。一方、制度に対する国民の理解が伴っていない状況も浮き彫りになり、不安払拭(ふっしょく)も課題となっている。