◆2018回顧(上)◆自然遺産登録へ再推薦決定
2018年12月28日
地域
日本復帰から65周年の節目を迎えた2018年の奄美は、「明」と「暗」が入り混じった1年となった。奄美・沖縄4島の世界自然遺産登録をめぐっては、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)の「登録延期」勧告、日本政府の推薦取り下げ、再推薦決定と進んだ。観光分野では日本エアコミューター(JAC)による島伝い路線が開設され、スカイマーク(SKY)は鹿児島を経由して中部地方と奄美大島を結ぶ路線を新設した。NHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」の放送に伴う奄美ロケも話題を呼んだ。新路線や大河は観光客誘致を後押しし、奄美空港の乗降客数は過去最多を更新している。一方、9月末には台風24号が奄美群島を襲い、家屋などの建物や農作物、ライフラインに大きな被害を与えた。さまざまな出来事に揺れた奄美の1年を振り返る。
◆自然・環境
世界自然遺産候補の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」について、IUCNは5月、推薦区域の見直しなどを求めて「登録延期」を勧告した。今年夏の「登録」が見込まれた奄美・沖縄に、「想定外」の評価が示された。
政府は6月、推薦の取り下げを決め、今年の登録を断念。20年の再挑戦へかじを切った。今後の推薦は1国1件に制限される。7月、国内で同じ20年の登録を目指す世界文化遺産候補との競合問題が持ち上がったが、政府は11月、奄美・沖縄の再推薦を決めた。
環境省は候補地の再編など推薦書の見直し作業を進め、12月に修正案がほぼまとまった。来年2月1日までにユネスコ世界遺産センターへ再提出し、夏にも再びIUCNの現地調査が行われる。
◆交通・観光
マルエーフェリーは3月、予約制での屋久島宮之浦寄港を開始。日本エアコミューター(JAC)は7月、奄美大島―徳之島―沖永良部島―沖縄本島を島伝いに飛ぶ「アイランドホッピングルート」を開設した。スカイマーク(SKY)は8月、奄美―鹿児島、鹿児島―名古屋に就航した。 奄美市紬観光課によると、18年の奄美空港乗降客数は11月末現在、77万3230人で過去最多となっている。
空の新路線誕生が相次いだ一方、陸路では奄美大島一円を営業エリアとする「しまバス」は人手不足などの影響で10月から路線を再編。車両の小型化、行政運行への移行も進めた。
ANAホールディングスは3月、傘下格安航空会社(LCC)のバニラ・エアとピーチ・アビエーションを19年度末をめどに経営統合すると発表。12月には19年の改正ダイヤを発表した。ピーチへの路線移管に伴い、奄美―成田、奄美―関西に運航空白期間が発生することが分かり、観光関係者からは入り込み客の減少を懸念する声が上がった。LCC2社は19年度中の統合見通し。
沖永良部島では、知名町が整備した産業クラスター創出拠点施設の運営をおきのえらぶ島観光協会(前登志朗会長)が受託し、4月、事務所を設けて業務を開始。沖永良部島の新たな観光、交流拠点が誕生した。
◆焼酎・紬
米国ロサンゼルスで5月に開かれた国際鑑評会の焼酎部門・最高金賞を龍郷町の町田酒造が受賞したほか、奄美群島の3社から金賞4点、銀賞1点が入賞し世界に存在感を示した。9月には群島6蔵元がLA焼酎会と共にロサンゼルスで試飲イベントを開催。奄美黒糖焼酎のブランド構築と輸出拡大へ業界は期待を膨らませた。
本場奄美大島紬協同組合は紬会館を奄美市名瀬浦上町の旧鹿児島県工業技術センターへ移転。同組合青年部会の若手職人11人が昨年立ち上げた技術継承企画はクラウドファンディングで資金目標2倍超の約300万円を獲得した。7月には紬会館で奄美・鹿児島の本場大島紬伝統工芸士会主催の初の合同展示会が開かれ、日本伝統工芸士会・田畑喜八会長が講演した。
◆庁舎建て替え
奄美の複数自治体で庁舎の建て替え事業が進んだ。
奄美市役所の名瀬本庁舎は8月に上棟式。12月末には完成し、来年2月に開庁する。市民広場、立体駐車場整備を経た全体の供用開始は20年3月を予定している。
今年1月に着工した和泊町新庁舎は本体工事が完了し、12月25日に施工業者から町へ引き渡しが行われた。現在引っ越し作業が進められ、年明け1月4日から新庁舎で業務を開始する。
与論町は12月4日、新庁舎建設起工式を茶花の建設予定地で開いた。高台への移転建て替えで、19年11月末完成予定。新庁舎での業務開始は20年1月を見込む。
知名町の新庁舎建設事業は6月までに基本構想検討委で基本構想を決定。今後、庁舎の規模や財源、建設候補地の決定など基本計画づくりを進める。22年度中の着工を目指す。