「もう降らないで」 大雨被害から1週間 台風襲来の懸念も 与論町

2024年11月15日

地域

水圧でハウスが折れ曲がり、土砂が流れ込んだ畑=14日、与論町古里

【沖永良部総局】8日から9日にかけて与論島を襲った記録的な大雨から1週間。浸水被害のあった住民や事業所の片付け作業はまだ続いている。畑では水に漬かった作物が枯れるなど、災害発生当初は分からなかった被害も表れてきた。来週には台風25号が近づく予報が出ており、住民は復旧作業と台風対策に追われている。「もう雨は降らないで」と嘆く声も聞かれた。

 

 

 

 

 

流された牧草ロールを指し示す農家=14日、与論町麦屋

町産業課によると、水に漬かるなどして収穫できなくなった農作物などの被害は13日午後5時現在、約8363万円(速報値)。ハウスや倉庫、機材などの施設被害は47件約835万円(同)。特にサトイモやインゲンなどの園芸作物、トルコギキョウやソリダゴなど花卉(かき)の被害が大きかったという。

 

与論町古里で野菜や果樹を栽培する箕作駿さん(33)の畑では近くの川が氾濫。ハウスの骨組みが水圧で折れ曲がり、土が深さ50センチほど取られたところに大量の土砂が流れ込んだ。

 

植え付けたばかりの果樹苗は流され、今月植える予定だったインゲンは諦めたという。今必要な支援として「ハウスも建て直すなら当面の運転資金。土砂の除去は個人ではできないので、役場を通して業者にお願いするしかない。雨が降ったらまた土砂がたまるので、緊急にやってもらわないと。台風も近づいている」と訴えた。

 

就農4年目での甚大な被害にも「こんなことで負けてられない。この環境でやると決めたのも自分だし、頑張るしかない」と前を向いた。

 

同町麦屋の畜産業、山田精蔵さん(73)は牛舎や自宅が1メートル余り水に漬かる被害に遭った。ラッピングして自宅前に置いていた牧草ロール100個以上が流される被害も。13日まで雨が続いたこともあり、片付けがはかどらない状況だ。

 

水に漬かった牧草について、「食べられる部分は食べさせ、足りない分は買うしかない。飼料、資材、燃料高騰で大変な中、こんな災害があるとよけい大変。これほど多くの雨は自分が生まれて初めての経験。今は雨が降らないでほしいというのが願い」と話した。

 

今回の大雨による建物の浸水被害は13日午後7時現在、住家で床上47棟、床下67棟の計114棟。事業所で床上40棟、床下1棟の計41棟に上った。町では支援策として9日から災害ごみの受け入れを行っているほか、12日から被災者応援寄付金の受け付けを開始。今後、被災者への住宅支援も検討している。