「ブルーツーリズム」活用し地域づくりを
2018年10月25日
地域
奄美群島水産振興協議会(奥田忠廣会長)主催の第26回奄美群島漁業振興大会が24日、奄美市名瀬の集宴会施設であった。群島内の漁協や行政などから関係者約70人が出席。「ブルーツーリズム」(観光型体験漁業)を活用した地域づくりの事例や水揚げした魚の鮮度保持への取り組みの発表もあり、参加者は奄美の海洋環境や豊富な水産資源が地域振興にもたらす可能性を確認した。
ブルーツーリズムに関して事例発表したのは、大和村国直集落のNPO法人「TAMASU」理事長で、奄美漁協大和支所所属の中村修さん。
中村さんは、与論島発祥とされる伝統漁法「ロープ引きトビウオ浮き敷網漁業」や、地元の高齢者に指導者を務めてもらう「アオサ摘み」を組み込んだ取り組みを紹介した。トビウオ漁業体験については、旅行会社の招聘(しょうへい)事業などを経て一般にも知られるようになり、地元住民との交流や地域活性化にもつながったという。
中村さんは観光型体験漁業の展開を通して▽魚食普及▽雇用拡大と漁業者の所得向上▽集落の観光ブランド化―の成果を示す一方、「観光業は農業や漁業と異なり、発展により地域に負荷を与えることがある」とも指摘。「観光は地域づくりの手段であり、目的ではない。住民がいつまでも住み続けたいと感じ、集落を離れた若者が戻って来たいと思える地域づくりに取り組みたい」と意欲を述べた。
引き続き研修会があり、奄美漁協笠利本所所属の石川伸二さんが、「活(い)け締め」による魚の鮮度保持への取り組みが若手漁業者に広がりを見せていると報告。「消費者や小売り業者の評価も高まった」とメリットを強調した。
与論町漁協の箕作広光さんは、同漁協が鹿児島大学水産学部の協力を得て確立した冷凍技術で4カ月半冷凍保存した刺し身が、捕れたて同様の鮮度を保っていたと報告。「本土の大消費地から遠く離れた離島水産業のハンディ克服に大きく貢献できる」と訴えた。
奥田会長はあいさつで、台風24号による漁業被害などに触れる一方、水産物輸送コスト助成実証実験について「19年度の新奄振事業での実施を国に要望している」と報告し、事業化実現に期待した。