「先人の思いを未来へ」 シンポ「明らかになる与論城跡」 与論町
2020年12月15日
地域
【沖永良部総局】「明らかになる与論城跡(与論グスク)」と題したシンポジウム(与論町教育委員会主催)が12日、同町砂美地来館であった。与論島内外の有識者5人が、研究発表や公開討論などを通して、町の文化財に指定されている与論城跡の価値や継承について考察。町文化財保護審議会の麓才良会長は「与論城跡に秘められている先人の思いをひも解き、未来へつなげたい」と歴史継承へ決意を新たにした。13日は、同町城地区の発掘現場で調査説明会もあり、参加者は与論城築城当時の人々の暮らしに思いをはせた。
与論城跡は、沖縄県のグスク(城)に類似する石積み構造を持つ城郭遺跡とされる。国指定文化財登録を目指し、2019年度から5年間の計画で調査を進めている。町教委によると、築城年代は調査中で、出土品には14~15世紀ごろの陶磁器が多いという。
シンポジウムは、与論城跡の研究成果を住民らへ周知する目的で開いた。地元住民や島内外の歴史研究家ら52人が来場。講師は麓会長、琉球大学国際地域創造学部の池田榮史教授、大野城心のふるさと館(福岡県)の赤司善彦館長、ラ・サール学園中学部長の永山修一さん、町学芸員の南勇輔さんの5人が務めた。
池田教授は、1993年の町の発掘調査で13世紀後半~14世紀後半ごろの遺物などが発見されことを紹介し、「13世紀に石積みをしていれば、沖縄諸島のグスクより古いことになる。築いた目的は軍事や祭事の拠点、与論の首長の居住地などの可能性がある」などと指摘した。
南さんは2019~20年度に実施した島内9カ所の調査結果などを報告し、今後の課題として▽築城年代の特定▽城域の把握│などを挙げた。このほか、麓会長は地元の古老から伝え聞いた与論城跡の変遷などについて説明。赤司館長は本土の古代の山城や中世の城館の特徴などを、永山さんは本土と奄美群島、沖縄諸島の関係性を示すとされる7~17世紀ごろの史料を紹介した。
公開討論では「与論グスクの調査によって、島の歴史を地元の人たちで明らかにすることに取り組める状況ができた」「与論の昔の話を聞ける人が少なくなった。断片的に残っている話も拾い上げ、記録に残していくことが大事」などの意見があった。
13日の調査説明会では、学芸員の南さんが発掘現場や石垣の前で、これまでの調査結果などを報告した。
シンポジウムと説明会は文化庁の「地域の特色ある埋蔵文化財活用事業」を活用して開催した。