「理由を知りたい」 事故原因究明の徹底を 屋久島沖オスプレイ墜落

2023年12月05日

地域

屋久島沖墜落事故の救難活動のため、奄美空港に飛来した米海兵隊MⅤ22オスプレイと搭乗員=3日午後4時半ごろ、奄美市笠利町

米空軍CⅤ22オスプレイが屋久島沖で墜落した事故を受け、県は11月30日、原因究明までの飛行停止を米側に要請するよう国に申し入れた。一方で救難活動のため、米側は米海兵隊オスプレイの奄美空港(奄美市笠利町)使用届を県へ提出。2、3の両日、沖縄県普天間飛行場所属のMⅤ22オスプレイが同空港に飛来した。県は受理に先立ち飛行経路などの事前周知を要請したが、4日午後2時時点でその説明はないという。地元からは「なぜオスプレイでなければならないのか」「なぜ奄美空港に着陸することになったのか」「理由を知りたい」との声が上がる。

 

■性能

 

オスプレイはヘリコプターのように垂直離着陸、ホバリングが可能で、回転翼の角度を前方に傾けることで推進力を生み、飛行機のようなスピードを得る事もできる。防衛省資料によると、米海兵隊MⅤ22は従来の輸送ヘリ(CH46)に比べ速度約2倍、搭載量約3倍、行動半径は約4倍。滑走路のない離島部でも着陸でき、有用性が高いと考えられている。

 

MⅤ22の行動半径は兵員24人を搭載した状態で約600キロメートル。行動半径は給油なしで往復できる片道分の距離を示す。普天間飛行場から屋久島空港までは直線距離で約530キロメートル。救難活動に向け、奄美空港で給油を行ったと考えられる。

 

オスプレイは国内に米空軍のCⅤ22、米海兵隊のMⅤ22、米海軍のCMⅤ22、陸自のⅤ22が配備されている。基本構造は同じだが任務や運用形態が異なり、今回墜落した米空軍CⅤ22は対テロ特殊作戦など、厳しい運用形態を求められる部隊の所属だった。

 

■事故率

 

「オスプレイは事故が多い」とのイメージが持たれるが、飛行10万時間当たりの重大事故発生件数を示す「事故率」では、米海兵隊運用機の平均値2・59(2022年9月末時点)に対し、MⅤ22は2・27(同)。一方でCⅤ22は6・00(23年9月末時点)と3倍近い。

 

吉田圭秀統合幕僚長は 定例記者会見で「オスプレイだけが他の航空機に比べて安全上問題が高いというふうには認識していない」と強調。安全性について「今回の事故原因も踏まえてしっかりと安全を確保し運用を図っていく必要がある」と述べた。

 

■主権国家

 

11月30日、松本尚防衛大臣政務官が県を訪れ、塩田康一知事らへ「住民に大きな不安を与えた」と謝罪した。なぜ、米軍機の事故を防衛省が謝罪したのか。憲法学を専門とする名古屋学院大学の飯島滋明教授は「日米安保条約では、日本に米軍がいるのは日本国民を守るためとなっている。しかし墜落事故が起きたことで、かえって市民を恐怖に陥れたことになる。そこで地方自治体に謝罪した」と説明する。

 

3日、奄美空港を訪れた奄美市の50代女性は「オスプレイがということよりも、県も国も要請している中なのに、こんなに無視されてしまうものなのかな」と話した。飯島教授は「憲法では『基本的人権の尊重』が基本原理とされ、自治体の首長や公務員には憲法尊重擁護義務(憲法99条)がある。主権国家である以上、原因究明まではオスプレイの飛行停止を求める外交をすべきと、自治体は国に働きかけることができる」と繰り返す。

 

3日、奄美空港には海上保安庁のヘリで飛来した機動救難士と見られる隊員の姿もあった。防衛省によると、3日時点で自衛隊艦艇6隻や海保巡視船3隻などが懸命の捜索に当たっている。奄美の人々もみな事故にあった乗員の早期発見を願っている。その先で、求めるのは再発防止のための徹底した原因究明と説明だ。

(佐藤頌子)