世界遺産と奄美観光考えるシンポ 鹿大島嶼研
2022年02月13日
地域
「世界自然遺産と奄美の観光―エコツーリズムによる保全と利用」と題したシンポジウムが12日、オンラインで開かれた。奄美大島と徳之島のエコツアーガイドらが講演し、自然体験を提供する観光利用の現状や課題を報告。来島者が奄美の自然や文化の保全に理解を深め、持続可能な観光につなげるために、「ガイドの役割が重要」と訴えた。
世界自然遺産の奄美大島、徳之島で、住民や観光業者、行政、研究機関の協働による観光利用と保全の在り方を探ろうと、鹿児島大学国際島嶼(とうしょ)教育研究センターが主催。オンラインで約150人が視聴した。
講演した奄美大島の観光ガイド・城泰夫さんは、世界遺産地域の金作原(奄美市名瀬)で、ガイド同行制や車両台数制限などを導入した地域の自主ルールや、希少な動植物が多い島最高峰・湯湾岳で検討が進む利用規制の取り組みなどを紹介。「観光客が増えれば経済効果は大きいが、自然への負荷が増えれば本末転倒だ」と強調した。
また、気象条件や新型コロナウイルスの影響などでガイドの仕事は「安定した収入が得られず、若者が少ない」と指摘。「若い人材が参入しやすい環境づくりが課題」と話した。
徳之島で自然保護活動やエコツアーの構築に取り組む「徳之島虹の会」の美延睦美さんは、農業が盛んな同島では観光需要が少なく、「エコツアーガイドの人数も質も不足している」と指摘。人材育成や、次世代を担う子どもたちの自然体験活動の充実を課題に挙げた。
奄美海洋生物研究会の興克樹さんは冬季観光で人気のザトウクジラと、自主ルールに基づいたホエールウオッチングなどの取り組みについて、徳之島虹の会の池村茂さんは、サンゴ礁が育む多様な海の生き物の魅力と環境変化の影響について講演した。
鹿大島嶼研の宋多情さんは、アマミノクロウサギなどを観察するナイトツアーで人気が集まる三太郎峠(奄美市住用町)で、昨秋始まった夜間の車両規制の試みを紹介。規制の導入に際して関わる住民が一部にとどまったとして、「世界遺産の管理に、住民が保全意識を持って参加することが重要」と呼び掛けた。