久慈白糖工場跡 調査成果を報告 県埋蔵文化財センター
2018年11月23日
地域
県立埋蔵文化財センターの出前講座「ワクワク考古楽」が22日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。幕末から明治にかけて瀬戸内町久慈で稼働した白糖製造工場跡の発掘調査の成果を同センターの湯場﨑辰巳さんが報告。工場施設跡とみられるレンガ積みの遺構などが出土したとして、「文献通りの近代産業遺産と確認できた。国内最古級のレンガ造り建物であり貴重な資料」と強調した。
白糖製造工場は、薩摩藩が奄美大島の久慈、金久(奄美市名瀬)、瀬留(龍郷町)、須古(宇検村)の4カ所に建設。久慈工場は面積約2400平方㍍の2階建て。4工場の中では最大規模。オランダ製の蒸気機関を備えるなど当時の最先端技術を導入したとされる。
東京・銀座の煉瓦(れんが)街で知られるアイルランド人の建築機械技師・ウォートルスと白糖製造技師・マッキンタイラーらが建築に携わり、1867年から71年まで稼働した。
発掘調査は同センターの「かごしま近代化遺産調査事業」の一環で2016、17年度に実施。講座で湯場﨑さんは工場施設跡とみられる円形や方形にれんがが積まれた遺構のほか、輸入品の耐火れんがや、島内で製造された赤れんがなどの遺物が出土したと説明。赤れんがは「日本で最も古いレンガの可能性がある」と考察した。
日本の近代建築史に大きな業績を残したウォートルスが手掛けた建築物の先駆けとなる遺産として、「(世界文化遺産に登録された)他の産業革命遺産と同様に重要」と位置付けた。