保全と地域づくり考える 自然保護団体が奄美大島視察 IUCNに提言も計画
2019年10月22日
地域
公益財団法人日本自然保護協会(亀山章理事長)主催のバスツアーが19~21日、奄美大島であった。自然保護に取り組む県内外の住民や研究者ら約20人が参加。世界自然遺産登録の推薦エリア周辺を巡り、環境保全と地域づくりの在り方について考えを深めた。ツアーで出た意見は11月ごろに世界遺産の審査機関である国際自然保護連合(IUCN)に提言する。
ツアーはアウトドア用品などを製造、販売するパタゴニア社の助成を受け開催。世界自然遺産登録を目指す奄美・沖縄の住民のほか、自然保護団体の会員やエコツアーガイド、沖縄県と関西、中部の大学教授らが参加した。
一行は奄美市住用町の市集落やマングローブ林、瀬戸内町の西古見集落、大和村の奄美野生生物保護センターなどを視察。最終日は瀬戸内町の陸上自衛隊瀬戸内分屯地と嘉徳海岸を訪れた。
嘉徳海岸は2014年の台風などで砂浜の浸食が進んだことから、住民が県に安全確保の対策を要望。県はコンクリート護岸整備計画を進めている。
同地は世界的に絶滅が危惧されているオサガメの日本唯一の上陸産卵記録地でもある。手付かずの自然環境が残る貴重な場所として、環境保護団体や県内外の市民グループは保全を求めてきた。
護岸の延長は当初計画の530メートルから180メートルに縮小。工期は今年3月に始まったが、6月に建設現場近くでアカウミガメの産卵が確認されたため現在は一時中断している。
参加者は海岸近くの侵食箇所や防風林の植樹状況などを観察。日本自然保護協会広報会員連携部の幸地彩子さんは「(護岸整備を求める人も反対派も)自分たちの土地と暮らしを守りたいという思いは同じ」とした上で、「どのように地域づくりを進めていけばいいのかを一緒に考えてほしい」と語った。
今後は情報共有や活動の協力を目的に沖縄北部や奄美エリアでネットワークづくりを進めるという。
ツアーに参加したNPO法人西表島エコツーリズム協会の徳岡春美事務局長は「環境への悪影響が心配される課題がたくさんあった。解決に向けて奄美と沖縄で一緒に取り組んでいきたい」と話した。