先進事例で課題解決へ 持続可能な地域学ぶ 龍郷町でシンポ

2023年08月28日

地域

 龍郷町主催のシンポジウム「~持続可能な地域社会へ~新たなまちづくり最前線」は27日、同町のりゅうがく館であった。一般社団法人E’more秋名共催。地域づくりの専門家を招き、先進地域の事例を交えた講演とパネルディスカッションで人口減少社会における持続可能な地域社会の在り方を考えた。

 

講師は一般社団法人「Next Commons Lab」代表理事で、持続的な社会の構築など多岐にわたり活動する林篤志さん。パネリストは林さんと、内閣府の地域活性化伝道師として地域活性化について指導・助言などを行う伊東将志さんが担当した。

 

林さんは、昨今の少子高齢化で税収などが減少し、今後自治体が担う公共サービスやインフラの維持が難しいと示した上で、共助の仕組みをつくる必要性を強調。公助の縮小を見据え、住民主体の複数の共同体が分散し、自治体や民間企業と連携しながら公共サービスなどを担う〝第二の自治システム〟について説明した。

 

事例として、2004年に中越地震で壊滅的な被害を受け、約2200人の人口が約800人まで減少した新潟県長岡市(旧山古志村)で取り組んだ「デジタル住民票」を紹介。NFT(非代替性トークン)の技術を用い、地域の象徴的な生物ニシキゴイのデジタルアートを販売。アートがデジタルな住民票として機能し、資源や関係人口などを生み出しているという。

 

そのほか、行政と民間企業、住民が連携した共助型買い物サービスや、カーボンクレジットや環境価値に主眼を置いたエネルギーの自給方法、地域住民が当事者意識を持てるよう、無作為に住民を抽出した協議会の開催などを紹介。「変わらないものに対して時間や労力を使うより、自分たちで新しい自治の仕組みをつくっていく考え方が必要」と呼び掛けた。

 

パネルディスカッションでは、伊東さんが三重県尾鷲市で取り組む事業を示しながら「世界的に少子高齢化率が高い日本での取り組みは、ある視点から見たら世界の最先端。取り組むことそのものに価値があり、一見ネガティブな事象がチャンスの種」と語った。

 

同町から参加した重枝一馬さん(33)は「地域づくりは地域の人がいかに熱量を持てるかだと思う。どうアプローチしていくか道筋が立った」と話した。