地域主役の観光づくりへ ナイトツアーテーマにシンポ「現状把握し守りながら利用」 奄美市名瀬
2025年02月25日
地域

自然と地元文化を生かした観光の在り方について意見を交わした討論会=24日、奄美市名瀬
シンポジウム「奄美のナイトツアーの可能性~自然遺産を活かした世界水準の観光地づくり~」が24日、奄美市名瀬の奄美市役所であった。行政や観光事業者、エコツアーガイド、地域住民ら70人余りが参加。同市住用町で人気の生き物観察スポット市道三太郎線周辺を対象に、地元との関わりも含めた観光の在り方について意見を出し合い、今後の方向性について考えた。
奄美大島三太郎線周辺における夜間利用適正化連絡会議事務局(環境省、県、奄美市)主催。市道三太郎線やその支線には国の特別天然記念物アマミノクロウサギなど希少種が多く生息。野生生物のロードキル(交通事故死)や利用者トラブルの防止などを目的に、夜間通行の事前予約や速度制限などを求める夜間利用ルールが2021年10月から運用されている。
環境省奄美群島国立公園管理事務所の広野行男所長のあいさつ後、奄美博物館の平城達哉学芸員と奄美市政策アドバイザーで大正大学地域構想研究所准教授の岩浅(いわさ)有記氏が登壇。平城氏は県の調査事業の一環で、三太郎線周辺におけるアマミノクロウサギやハブ、アマミトゲネズミなど夜行性の生き物の出現数を記録した結果を紹介。希少種を観察しやすい夜の森の魅力を伝えた一方、車にひかれた個体も紹介し「守りながら利用すること、そして現状を把握することが重要」と訴えた。
岩浅氏は自然との触れ合いや文化交流などを主軸とする「アドベンチャーツーリズム」の思想が近年、世界的に主流になっていることを紹介。多数の旅行者を是とする時代から「地域の価値に共感・尊重するあなたに来てほしい」といった地域主役の観光の在り方を説いた。
後半はガイドや地元住民らも加わった討論会。住用町で体験型の民宿を営む和田美智子さんは、地域の年間行事に基づいた観光メニューづくりや、発信のための場と関係者の連携の重要性を体験談を交えながら紹介した上で「山、海、川などあらゆる場所に神がいて、(山に入るにしても)酒や塩を持ってはらいをしてから入っていた先輩たちの敬虔(けいけん)な気持ちを今の人たちも受け継いでほしい」と訴えた。
ほかの登壇者からも、自然と地元の文化や観光施設が連携した形でのツアーの在り方を考える意見が相次いだ。会場からは同町内で、夜に簡単にでも食事ができる場所があった方がいいという声もあった。