奄美の自立発展へ提言 復帰65周年シンポジウム
2018年10月15日
地域
奄美群島の日本復帰65周年記念の「復帰運動に学び自立発展を語るシンポジウム」が14日、奄美市名瀬の県立奄美図書館であった。1次産業や文化、情報処理、郷土研究などの分野で活動する7人がパネルディスカッション。復帰運動に携わった先人のエネルギーに思いをはせ、世界自然遺産登録への取り組みや格安航空会社(LCC)の路線就航など追い風が吹く奄美の自立発展について提言した。
民間8団体で組織する実行委員会の主催。11月24日に奄美市である「第2回全国奄美人大会」に向け、「統一した奄美の将来ビジョン」を語り合うことが目的。市民ら約70人が来場した。
パネルディスカッションで奄美郷土研究会の森紘道会長は、奄美の将来ビジョンと復帰運動の関連について「民主的で文化の香り豊かな社会を築こうとした先人達の思いを受け継ぎ、それを実現するために取り組んでいくという側面で復帰運動を捉えるべき」と提言した。
元天城町長の寿洋一郎氏は、復帰運動の先頭に立った泉芳朗の「国、県の補助に頼らず、郡島民が必要とする事業を群島民自らが実践することが求められる」という言葉を紹介した上で、経済的な自立性を表す自主財源比率が現在も2割未満にとどまっている自治体の実態にも触れた。
一方で、「経済、財政の自立については、数字ばかり追ってはならない。真の自立とは、自我と自己責任の確立」とする有識者の考え方も紹介した。
奄美情報処理専門学校長の福山洋志氏は、奄美でのIT産業の将来性を解説し、NPO法人「すみようヤムラランド」前理事長の和田美智子さんは、世界自然遺産登録への取り組みが進む中で、奄美の優位性を生かした振興策を提案。「泉芳朗先生を偲ぶ会」の楠田哲久会長は、復帰運動の様子を写真で振り返った。
パネルディスカッションに先立ち、東北大学名誉教授の石田秀輝氏が「孫に手渡せるものは何か? 未来の奄美を考える」の題で講演。「歴史を振り返りながら、過去の知恵や技術、思考をどのように生かすかが重要だ」と提言した。