成年後見NPOが始動/喜界町
2018年01月16日
地域
判断能力が不十分な認知症高齢者や障がい者などに代わって第三者が財産管理や医療、介護を引き受ける成年後見制度の普及を図ろうと喜界町のNPO法人「ゆらい」(中村直美理事長)がこのほど、受託業務を開始した。独居や認知症の高齢者が増加傾向にある地域の実情を踏まえた取り組みで、成年後見と介護サービスの業務を同時に行うのが特徴だ。将来的には、奄美群島の他団体との連携も視野に人材確保への取り組みも模索していく。
ゆらいは、町内で介護サービス事業を行っていた民間事業所が中心となり設立した。町内に認知症の高齢者が約550人いるとみられ、こうした人々の生活も支援しようとの趣旨。成年後見制度に詳しい町内在住の司法書士、平石幾郎氏(62)が副理事長を務める。
成年後見人は地域に住む司法書士などが選任されるケースが多い。被後見人の財産管理などが中心で、介護支援などは家族や専門職員が行う必要がある。これに対し、司法書士と介護サービスの専門家で組織するゆらいは両方の業務を同時に進めることが可能だ。
平石副理事長は「成年後見制度の知識と介護サービス事業所のノウハウも絡め、新たな形で高齢者を支援できる」と説明する。スタッフは理事、社員合わせて15人。現在2人が後見人として業務を行っている。
成年後見制度を取り巻く環境について、平石副理事長は「身寄りのない高齢者や認知症患者が地域で増える一方で、後見人への選任事例が多い司法書士の数は全然足りない」と指摘。「裁判所が後見人にふさわしいと認めた人が後見人になれる市民後見人の制度もあるが、責任の重さからハードルが高く、制度も十分に知られていない。将来的にはゆらいを受け皿に、市民後見人など人材育成も進めたい」と話した。
成年後見制度に関しては、奄美市のNPO法人「あまみ成年後見センター」(勝村克彦理事長)が3年前から市民後見人の育成講座を行っており、本年度までに約100人が修了した。勝村理事長(47)は「奄美大島と海で隔てた喜界島での組織設立は大変、心強い」と期待。平石副理事長は「後見人確保は奄美にとって大きな課題。情報交換などで連携できればありがたい」と話した。