救急医療への理解深める 奄美市で講演会
2018年09月08日
地域
2018年度救急医療講演会(大島郡医師会主催)は7日、奄美市名瀬の奄美文化センターであった。2氏が講演し、救急医療関係者らがパネルディスカッションを行った。聴講者は全国的に不足する臓器提供に思いを巡らせ、近年推進されている奄美の水難救助体制の充実に期待。予期できない災害や急病に対応する救急医療について理解を深めた。
冒頭、大島郡医師会の向井奉文会長は、6日未明に発生した北海道胆振(いぶり)地方を震源とする地震に触れ、「突然起こる自然災害に、奄美大島内でも危機意識が高まっていると思う。講演を通して救急医療のあらゆる側面に理解を深めてほしい」と述べた。
講師は県臓器移植コーディネーターの山口圭子氏と医療法人碧山会記念クリニック奄美所長の佐野常男氏が務めた。
山口氏は、臓器提供の一連の流れと日本の現状について講演。臓器移植を要する患者に臓器が行き届かない現状を「腎臓移植を受けた人の平均待機日数は5339・9日」と伝えた。
亡くなった人からの臓器提供が特に少ないといい、臓器提供について本人の意思表示がなく、家族が悩むこともあると指摘。山口氏は「臓器提供についての意思を家族と共有してほしい」と呼び掛けた。
佐野氏は島の水難救助体制について講演した。10年7月、奄美市笠利町の土盛海岸で男性2人が沖に流された際、救助要請を受けた奄美海上保安部が現場到着までに1時間以上かかった事態を経験。「当時の奄美には水難救助体制がなかった」と話した。
以降、佐野氏の働きかけなどにより同年秋、消防と海保が水難救助で連携する覚書きを交わした。17年、奄美市消防団に機能別水上バイク小隊が発足し、18年には笠利消防分署に水上バイクが配備された。「8年かけて水難救助体制の骨組みができてきた。日本一安全な奄美の海辺をつくるべく、関係機関と連携する必要がある」と述べた。
パネルディスカッションでは、大島地区消防組合職員らの寸劇を交えながら、救急医療関係者らがそれぞれの視点からドクターヘリの役割を解説した。
医療、介護関係者や一般100余人が来場し、熱心に耳を傾けた。聴講した奄美市名瀬の湊ムツ子さん(73)は「普段耳にする話題ばかりだったが、深く考えたことはなくとても勉強になった。臓器提供については今後、家族とも話すようにしたい」と話した。
講演に先立って行われた救急協力者表彰では、今年7月、奄美市名瀬長浜町で発生した交通事故で心肺停止となった男性に対し、的確な救命措置を行い、救急隊に引き継いだとして、佐藤勇人さん、清正辰剛さん、要雅章さんを表彰した。