現場での容態把握に効果 大島消防、多言語対応運用1年
2019年06月01日
地域
大島地区消防組合が昨年6月導入した、119番通報や救急現場での外国人を対象とした多言語対応システムは1日、運用開始から1年となった。救急現場2件で利用があった一方、外国語の119番通報はなかった。消防は「迅速な容態把握に効果が感じられる。自治体や関係機関と連携し、外国人観光客への周知に努めたい」としている。
同システムは、日本語を話せない外国人から119番通報を受信した際、電話通訳センターを介して通信指令室と通報者の3者間同時通訳を行うもの。管内の各救急車両に配備された携帯電話でも利用でき、救急隊員と外国人傷病者との会話に活用する。
15カ国語が対象で、24時間365日対応可能。世界自然遺産登録へ向けて外国人観光客の増加が見込まれることから、同組合が県内で初めて導入した。
導入後1年間でシステムを利用したのは、外国船乗組員の救急搬送現場2件(5月30日現在)。1件目は昨年10月、脊椎損傷疑いのベトナム人男性=当時(43)、2件目は今年3月、虫垂炎疑いのフィリピン人男性=当時(47)=を搬送する際、いずれも救急隊員と傷病者との会話に利用した。
同組合消防本部通信指令課の郁秀安課長は「通訳を介することで円滑な意思疎通ができ、迅速な容態把握につながった」と評価しつつ、「まだ運用例が少なく、今後さまざまな事案に対応する中で課題が出てくると思う」と語った。
郁課長は「外国人観光客が通訳と一緒にいない場面は十分に予想される。関係機関と協議の上、外国語表記の観光パンフレットに『119番』を記載するなど、周知策を考えたい」ともしている。
県消防保安課によると、県内の消防関係20機関のうち大島地区消防組合のほか、鹿児島市消防局など本土7機関が今年5月までに多言語対応システムを導入した。
未導入の徳之島地区消防組合と沖永良部与論地区広域事務組合は「管内では需要が見込めず、導入の予定はない」とし、外国語での通報には「スマートフォンの通訳アプリなどを活用して対応する」としている。