相続放棄、倒壊を危険視 県内初の略式代執行報告 「近隣不安」「個人の責任」の声も 奄美市空き家対策協

2024年02月09日

地域

県内で初めて実施した特定空き家解体の略式代執行に関する報告などがあった奄美市空き家等対策協議会の会合=8日、同市役所

奄美市空き家等対策協議会(伊集院平應会長、委員11人)は8日、市役所で会合を開き、2023年度の取り組み状況を確認した。昨夏、県内で初めて実施した所有者不在(不明)特定空き家解体の略式代執行について、市側は「相続放棄され、倒壊の危険性は著しく高かった」と説明。委員からは「近隣は不安。スピード感ある対応を」「本来は個人の責任で対処すべき」など意見が寄せられた。

 

同対策協は市の空き家等対策計画(21~25年度)に基づいて21年3月発足。同計画の策定・変更や空き家対策を推進する各種事業に関する事項のほか、早急な対応を要する「特定空き家」の認定や一連の行政措置についても協議する。

 

市側によると、略式代執行は同市名瀬の密集地で実施した。近隣の苦情を受けて倒壊の危険性を調査し、関係者への聞き取りで相続放棄されていることも確認。昨年8月までに特定空き家として認定し、解体撤去を代執行した。解体撤去費は約150万円。土地の公売による費用回収が見込めず、予算措置で対応する。

 

一連の経緯を踏まえ、委員からは「慎重な判断も理解できるが、近隣の恐怖心だって計り知れない。早く代執行できる体制も大事では」「大前提として空き家管理は個人の責任。行政措置や助成制度を分かりやすく周知すべき」「適切に相続されていない物件は多い。4月の相続登記義務化は期待できる要素」などさまざまな意見が上がった。

 

このほか23年度(1月末現在)の取り組み状況として、空き家相談・調査は41件でうち除去3件、改善9件。老朽化した家屋の解体を支援する「危険空き家等除去助成金」は、申請の取り下げや対象外を除く8件の交付を決定した。

 

県宅地建物取引業協会との連携協定に基づく(空き家所有者ら780件対象の)情報提供同意依頼は、昨年11月までに3回送付し、回答は累計85件。情報提供に同意した27件のうち12件を不動産事業者とつないだ。すでに4件が売却物件、3件が賃貸物件として登録されている。

 

県土木部住宅政策室によると、空家等対策特別措置法が施行された15年以降、県内で略式代執行を実施した自治体は奄美市が初めて。所有者不在(不明)でない空き家対象の行政代執行は18年に鹿屋市が実施した1件となっている。