自治体でばらつき/要支援者の個別避難計画/津波警報機に推進求める声/奄美12市町村

2022年01月23日

地域

奄津波警報の発令を受け、高台へ避難する車の列。要支援者の避難の迅速化へ、個別避難計画の作成が急がれる=16日、奄美市名瀬

災害に備え、自力での避難が難しい要介護高齢者や障がい者ら要支援者の円滑で迅速な避難を目的に、あらかじめ定めておく「個別避難計画」。昨年の災害対策基本法の一部改正で、作成に向けた努力が市町村に義務付けられたが、現状では自治体ごとで取り組みにばらつきがある。16日未明、奄美群島に津波警報が発令された際、自力で避難できず自宅待機を余儀なくされたという要支援者もおり、介護福祉の関係者からは計画の作成を急ぐよう求める声も出ている。

 

個別避難計画は、車いすの高齢者ら避難行動要支援者ごとに、避難支援を行う人や緊急時の連絡先、避難先などの情報を記載した計画。支援する人、される人が情報を事前に共有し、迅速な避難に役立てる。

 

県災害対策課によると2021年4月現在、奄美の12市町村で個別避難計画の作成を終えているのは瀬戸内、和泊、知名、与論の4町のみ。他は一部作成済みか未着手。地域の見守りネットワーク構築事業などを通じ、要支援者の避難体制を整えている自治体もある。

 

約7000人の避難行動要支援者を見込む奄美市は19日現在、計画作成済みが184人。市総務課危機管理室によると、計画作成には要支援者の個人情報を関係者が共有するため、本人の同意が必要だが、理解を得るのに苦労する場合も。また自主防災組織がなかったり、コミュニティー活動が希薄な地域では、避難を手助けする支援者の確保も課題という。

 

一方、16日の津波警報による避難を受け、計画作成済みの自治体からも課題を問題視する声が挙がった。瀬戸内町は各集落の区長や民生委員の協力で、これまで約700人の個別避難計画を作成。町の防災担当者は「今回の津波警報の際、計画通りに避難が行われた人もいたが、そうでないケースもあった。いざとなれば支援者も自分の身を守ることが最優先。あくまで『できる範囲』の支援であり、計画を作成したから大丈夫ということではない」と話した。

 

約250人の個別避難計画を作成している知名町の担当者は「事前に定めた要支援者が多すぎると支援する側が不足し、本当に支援が必要な人に手が回らなくなる恐れもある。支援の優先順位や人数の絞り込みなど、計画の見直しも必要と思う」と語った。

 

今回の津波警報を受け、奄美大島介護事業所協議会(盛谷一郎会長)など2団体は18日、個別避難計画の作成推進を含む、災害時の要支援者の避難体制構築を求める要望書を奄美市へ提出した。

 

同協議会の勝村克彦副会長は「災害時の要支援者の避難には地域の協力が不可欠。個別避難計画の作成は要支援者本人の同意が必要だが、今回の津波警報を受け、計画作成の必要性を感じた人も多かったと思う。この機をチャンスと捉え、介護福祉の関係者や行政、地域が一体となり避難体制の構築を進めていければ」と述べた。