観光と漁業の両立で討論 与論で日本ウミガメ会議
2018年11月11日
地域
第29回日本ウミガメ会議in与論島(NPO法人日本ウミガメ協議会主催)が10日、与論町中央公民館で始まった。奄美での開催は沖永良部島、奄美大島に続いて4年ぶり、3回目。全国の研究者や自然保護関係者、地元住民ら約180人が参加。増加傾向が続くアオウミガメと観光利用、漁業への影響をテーマにシンポジウムがあり、専門家や地元関係者らが環境保全と産業振興の両立に向けて意見交換した。
開会式であいさつした山元宗与論町長は「与論島は間近に泳いでいるウミガメが頻繁に見られる一方で、漁業被害が懸念されている。関係機関との調整も必要」と指摘。同協議会の松沢慶将会長は「保護の裏側で起きている漁業への影響を受け止めないといけない。古くから人とウミガメがどう向き合ってきたかという文化にも目を向け、どう進むべきか議論したい」と述べた。
シンポジウムでは与論町環境課の光俊樹さん(与論島)、奄美海洋生物研究会の興克樹さん(奄美大島)、工房海彩の池村茂さん(徳之島)、沖永良部ウミガメネットワークの山下芳也さん(沖永良部島)、沖縄・座間味村役場の宮里俊輔さん(座間味島)が各島のウミガメを取り巻く状況を報告した。
光さんはウミガメによるモズク養殖場の食害に関する調査結果を報告。1カ月余りの監視で食害は確認されなかったものの、実態把握にはより長期の調査が必要との展望を示した。宮里さんは漁網に掛かったウミガメを地元漁業者が処分し、観光業者とのあつれきを生んだ事例を紹介。「観光も漁業もどちらも大切。両立の方法が見つからないか」と模索した。
観光、漁業関係者を交えたパネルディスカッションがあり、与論でマリンレジャー事業を展開するタンディマリン代表の鬼塚直俊さんは「ウミガメは10年ほど前から急に増え始め、内海でも見られるようになった。シュノーケルで間近に体感できる。昔から幸福を招くといわれている」と魅力を紹介。
与論町漁業協同組合代表理事組合長の阿多美智雄さんは「漁業者から多くの被害報告がある。(県の)条例で守られたカメからどう被害をなくすか。皆さんの知恵を借りて観光と自然、漁業の共存の道を探りたい」と呼び掛けた。
全国の2018年期の混獲や上陸・産卵状況などの報告、口頭発表、ポスター発表もあった。最終日の11日も口頭発表がある。