貴重な儀礼食を再認識=奄美〝食〟の文化祭「三献」
2018年02月19日
地域
第1回奄美〝食〟の文化祭「三献」(NPO法人奄美食育食文化プロジェクト主催)は17日、奄美市名瀬の集宴会施設であった。島内外から135人が参加し、西郷隆盛と愛加那が三献で祝言を挙げたとする記録に基づき、その様子を現代風に再現した。参加者は奄美の先人がつないできた貴重な儀礼食を再認識し、継承する決意を新たにしていた。
記録によると、西郷と愛加那は1859(安政6)年、龍郷で祝言を挙げたとされる。この日は西郷役を結忠臣さん(42)=龍郷町、愛加那役を秋葉深起子さん(41)=同、媒酌人の龍佐民、石千代夫妻役を安田荘一郎さん(64)=奄美市=と泉弘子さん(76)=同=が務めた。
唄者・中ほずみさんの迎え唄で4人が入場。祝い唄で座を清めた後、三献の祝儀が始まった。一の膳に餅の吸い物、二の膳に刺し身、三の膳に肉の吸い物が出され、一膳食べたら酒を飲み、それを3回繰り返した。
同プロジェクトの久留ひろみ代表が食べ方や作法など解説を加えながら進行。最後に各テーブルの年配者が塩、コンブ、干物の3種塩盛り(シュムリ)を配り、いただいた。
後半は、久留代表が奄美各地域で異なる三献を写真で紹介したほか、奄美西郷塾塾長でもある安田さんの西郷に関する講話があった。
岡山県から帰省し、参加した遠田(旧姓・坂元)政子さん(70)は「本土へ嫁いで40年間、正月には欠かさず三献を出しているが、70歳を機にやめようと思っていた。今回参加して大切なものだと再認識した。これからも続けたい」と話した。
大役を果たした結さんは「学生の頃から西郷に似ていると言われていたが、知らないことばかりで今回あらためて勉強になった」、秋葉さんは「役をいただいたことで西郷と愛加那の新たなストーリーを知る事ができた。貴重な体験でした」と笑顔で話した。
文化祭では三献の祝言再現を前に、鹿児島女子短期大学名誉教授の福司山エツ子さんが講演。三献は日本料理の一つである本膳料理の基本であるとし、「奄美に残るこの形を大事にしてほしい」と訴えた。