野良猫の繁殖防止へ 西阿室集落で「TNR」 瀬戸内町加計呂麻島

2021年01月29日

地域

不妊手術を行う伊藤獣医師=24日、瀬戸内町加計呂麻島(提供写真)

不妊手術を行う伊藤獣医師=24日、瀬戸内町加計呂麻島(提供写真)

 瀬戸内町加計呂麻島の西阿室集落(祷昭哲区長、55世帯)は23、24の両日、集落内にいる野良猫が増えないように不妊手術を行うTNRを実施した。奄美いんまや動物病院の伊藤圭子獣医師の協力で、捕獲した猫3匹に施術した。伊藤獣医師は「残った野良猫からまた増える恐れがある。島全域で定期的にTNRを行うべき」と述べた。

 

 西阿室集落では近年、野良猫によるふん尿や、畑を荒らすなどの被害が後を絶たず、住民らが頭を悩ませていた。加計呂麻島で定期的に出張診療を行っている伊藤獣医師に集落側が相談し、TNRの実施を決めた。同島の集落でTNRが行われるのは初めて。

 

 TNRは野良猫を捕獲(Trap)して不妊手術(Neuter)後に元の場所に戻す(Return)ことで、野良猫の繁殖を制限する試み。手術をすることで発情期の鳴き声や尿によるマーキングを抑制し、病気予防にもつながるとされる。猫は手術済みの印に耳先をカットして放す。

 

 西阿室集落で捕獲された3匹はいずれも雌で、1歳未満とみられる若い個体ばかりだった。伊藤獣医師は「手術をしなければ、猫は半年で3匹から10匹に増える可能性がある」と指摘。「加計呂麻島でも交通事故やハブなど猫にとっては危険が多い。外猫の在り方を考えないといけない」として、野良猫や放し飼いの猫を増やさないように、猫の適正飼育の推進を呼び掛けた。

 

 世界自然遺産登録に向けて、奄美大島5市町村は希少種を襲う野生化した猫(ノネコ)の発生源対策として、ノネコの元になる野良猫のTNR事業を進めている。希少種が生息する森林に近い地域から対策を進めており、瀬戸内町町民生活課は「今のところ加計呂麻島での計画はない」としている。

 

 西阿室集落はTNRの結果を踏まえて、町側に加計呂麻島でのTNRの実施や、適正飼育の指導などの要望を盛り込んだ報告書を提出する。祷区長(73)は「1度では全ての猫を捕獲できず、継続する必要がある。町が支援してくれるとありがたい」と語った。

 

西阿室集落で捕獲された猫=24日、瀬戸内町加計呂麻島(提供写真)

西阿室集落で捕獲された猫=24日、瀬戸内町加計呂麻島(提供写真)