金作原の利用規制 今夏見送り 世界自然遺産登録延期で 奄美大島
2018年08月06日
地域
奄美大島の世界自然遺産登録による観光客の増加を見据えて、国、県、奄美市などが金作原国有林(同市名瀬)の周辺で検討している通行規制などの利用ルールについて、今年夏に計画していた運用開始が見送られたことが分かった。遺産登録の延期を受けて、利用を制限するガイドが同行しない観光客への対応など基本的なルールの見直しを図る。県自然保護課は「関係機関と調整して慎重に検討したい」としている。
金作原一帯は天然の亜熱帯照葉樹の森に多様な動植物が生息・生育する世界自然遺産の推薦区域。市街地からも近く、奄美大島を代表する自然観察スポットとして知られ、訪れる観光客は年々増加している。
一方で、金作原への主要ルートとなっている市道奄美中央線や林道知名瀬線は幅員が狭く、未舗装で車両の離合が困難な場所も多い。道路沿いの希少な植物の踏み付けや車両トラブルの増加、混雑による観光客の満足度の低下も懸念されている。
金作原の自然環境の保全と、質の高い自然体験の提供を目的に、環境省、林野庁、県、奄美市、民間団体が2017年2月に奄美大島利用適正化連絡会議を設置し、利用ルールの導入に向けた検討を進めた。
今年2月には、金作原と麓の知名瀬集落を結ぶ市道、林道など約9・3㌔の区間で、一般車両の乗り入れの自粛と、利用者に奄美群島エコツーリズム推進協議会の認定ガイドの同行を求める利用ルールの実証実験を実施。3月の同会議の会合で、実験結果を踏まえて今年の夏休み期間中にルールの運用を試行的に開始する方針を決めていた。
南海日日新聞の取材に、同会議事務局の県自然保護課・大西千代子奄美世界自然遺産登録推進室長は「ガイドを同行しなくても、一般の人が自由に入れる日をつくるなど、利用の在り方について専門家から提案があった。(遺産登録が)延期になったこともあり、有識者や地元ガイド、行政関係者に聞き取りをしてルールを整理する」として、今年夏の運用開始を見送る考えを示した。
今後の日程については「遺産登録に向けて着実に進める。今年中にも(ルールの)試行を開始したい」と述べた。
同会議を構成する奄美大島エコツアーガイド連絡協議会の喜島浩介会長は「車両が増えれば大混乱になることが予想される。各方面の知恵を借りて、スピード感を持って最善のルールを考えてもらいたい」と注文した。