30年間の広報を1冊に 奄美市名瀬大熊

2019年12月12日

地域

「平成大熊の歩み」を手に、完成を喜ぶ大熊町内会の役員=11月、奄美市名瀬

「平成大熊の歩み」を手に、完成を喜ぶ大熊町内会の役員=11月、奄美市名瀬

 奄美市名瀬の大熊町内会(重田茂之会長)がこのほど、約30年分の町内報を1冊の本にまとめた「平成大熊の歩み」を出版した。1990年代、大熊の区画整理事業の進行状況を共有するために、町内会でこつこつ手書きで始めた広報紙。町民に寄り添ったローカルな視点が評判を呼び、やがて短歌や小話も寄稿されるように。集落の文芸文化をも支えたユニークな1冊となっている。

 

 町内報は、当時町内会の広報を担当していた重田会長が91年3月に発行を開始。集落の街並みを変える土地区画整理事業が進む中、決定事項や課題を町内で共有するのが目的だった。

 

 次第に話題は広がり、91年9月号には「豊年相撲、一重一瓶で参加しよう」と呼び掛けたり、2013年6月号は、こぐま商店のオープンが話題になるなど、時代を反映。関西大熊会など郷友会組織にも郵送され、ふるさとデクマの郷愁を呼び好評を得た。

 

 ひそかな人気を呼んだのは、同町の福元喜美義氏寄稿による方言小話「新イチヌギ話(とっておきの話)」。大熊での昔話や日常を、方言を交え、とんちやユーモアで笑いを誘った。読者から短歌も寄せられるようになり「大熊文芸」コーナーも開設。広報紙の枠を超え、町民の豊かな文芸活動の一助となった。300回を経た17年4月号からは、副会長の久野裕樹さんが執筆を引き継いだ。

 

 町内報発行期間、大熊集落の人口は754人(2000年)から1099人(17年)に増加。重田会長は「過疎対策が課題になる中、大熊は人口が増えた地域。平成から令和へ町内の歴史を伝え、これからも親しまれるミニコミ誌として役立ててもらいたい」と話した。希望者には無料で配布するという。

 

 「平成大熊の歩み」はA4判、カラー、366㌻。