シマでゼロから肉用牛経営 妻笑子さん「ここに住みたい」 要さん、墓参りきっかけにIターン  沖永良部島

2018年07月23日

地域

牛舎で、牛にえさをやる要さん=18日、知名町住吉

牛舎で、牛にえさをやる要さん=18日、知名町住吉

 約3年前に夫婦2人で沖永良部島に移住し、畜産業(肉用牛経営)を始めたIターン者がいる。知名町上平川の要秀人さん(36)は現在、同町住吉で自分の牛9頭と、知人から委託された牛約30頭を飼育している。来島した当初は農業の知識も貯えも頼るつても特段なくゼロからの出発。Iターン者が島で就農するまでの苦労も感じたという要さんは「自分のような移住者が就農しやすい環境づくりに少しでも貢献したい」と語る。

 

 兵庫県尼崎市出身の沖永良部島3世。祖父の墓参りで来島した際、香川県出身の妻笑子さん(39)が「ここに住みたい」と話したのをきっかけに、大阪市の印刷会社を辞めて2015年11月にIターンした。

 

 「都会に住んでいてもスーパーで買っている肉や野菜がどのようにつくられているか、全く知らなかった。だから島では農業をやってみたいと思った」

 

 就農意欲は人一倍あったが、畑地が不足している沖永良部島で、来たばかりの移住者に畑地を貸してくれる人は決して多くない。和泊、知名の両町役場に就農相談に行って真っ先に言われたのは「まずは地域で住民の信頼を得て」だった。

 

 地域行事に積極的に参加し、上平川大蛇踊り保存会のメンバーにも加わった。仕事はバレイショ、ソリダゴ、サツマイモづくりのアルバイト。ユリ球根の掘り取りも経験した。

 

 「少しは認めてもらえるようになったかな」。そう感じ始めていた矢先、知人の神里隆樹さん(39)から「父親の体調が悪く、実家の畜産業を少し手伝ってもらえないか」と相談された。

 

 知識もなく最初は軽い気持ちで引き受けたが、牛と接するうちに心の中に変化が生まれた。

 

 「仕事は見よう見まねでやり、牛飼いの仕事について本を読んで少しずつ勉強した。牛のお産に初めて立ち会った時はずっとどきどきしていた。生き物の命を扱う仕事はプレッシャーでもあり、やりがいでもあった」と要さん。気が付いたら牛飼いにはまっていた。

 

 現在、念願だった自分の牛を手に入れ、神里さんから畜舎の一部を借りて飼育している。目標はさらに自分の牛を増頭し、沖永良部で畜産業を始めたいと考えている移住者を雇い技術を身に付けさせ、就農を支援すること。

 

 「自分がそのモデルになれたらいい。島の移住促進と畜産振興に役立てれば」と目を輝かせた。

  (沖永良部総局)