奄美ドクヘリ運航委「施設間搬送の検証を」

2018年10月04日

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施設間搬送の在り方などについて議論を深めた奄美ドクターヘリ運航調整委員会=2日、奄美市名瀬の県立大島病院

施設間搬送の在り方などについて議論を深めた奄美ドクターヘリ運航調整委員会=2日、奄美市名瀬の県立大島病院

 奄美ドクターヘリ運航調整委員会の2018年度会合は2日、奄美市名瀬の県立大島病院救命救急センター4階研修ホールであり、17年度の出動実績報告書案などが示された。17年度出動件数は当初の想定(200~250件)を上回る523件。うち施設間搬送が262件とほぼ半数を占めた。出動件数の多さと県本土や沖縄への長距離搬送が財政運営を圧迫しており、ドクターヘリの運航維持に向け、施設間搬送に緊急性があるかなどを検証する必要性が課題に挙げられた。

 

 事務局によると、17年度の奄美ドクターヘリ運航日数は台風接近時の運休3日を除く362日間で要請件数は675件。出動件数523件の内訳は現場出動230件、施設間搬送262件、出動後キャンセル31件だった。

 

 施設間搬送が多い要因として、奄美群島には救急車での搬送が困難な離島が点在しているため、奄美大島外の医療機関から県立大島病院への搬送が増加。さらに奄美群島内での医療完結を目標とする中で、群島内の医療機関では対応困難な患者に対し、高い割合で県本土や沖縄県への搬送を行っていることも指摘された。

 

 また、県本土や沖縄県への長距離搬送で、総飛行時間は約509時間と全国平均約255時間の約2倍。重複要請が増加し、緊急の要請に対応できなくなるなどの問題も懸念されている。

 

 原純救命救急センター長は施設間搬送の多さについて、「これまで県本土や沖縄に運ぶ手段がなく、諦めていた件数が数値に出てきたのだと思う。私たちのヘリを使って、ニーズが掘り起こされたのは良かった半面、現場に行けない事案が出てくるのであれば、この問題を整理する時期にきているとも感じている」と述べた。

 

 会合ではこのほか、搭乗人員や出動要請最終時刻を変更する運航要領一部改正案、施設間搬送を検証するための同委員会組織の見直しについて承認した。