戦争体験「生きた記録に」鹿大生が龍郷町で戦跡調査

2018年12月05日

地域

戦争体験者から聞き取り調査をする鹿児島大学の学生(左)=2日、龍郷町

戦争体験者から聞き取り調査をする鹿児島大学の学生(左)=2日、龍郷町

 鹿児島大学法文学部の学生6人が1~3日、戦争遺跡調査のため龍郷町を訪問した。1日は戸口、2日は幾里集落で地域の高齢者から戦争体験や当時の暮らしを聞き取った後、学校跡地に残る奉安殿を測量調査。戦争体験者の高齢化で聞き取り調査が難しくなる中で、同学部の石田智子准教授は「実際に奉安殿を使っていた世代のお話が聞くことができた。生きた記録になる」とその重要性を強調した。

 

 調査は2016年度から取り組む「南九州・南西諸島を舞台とした地域中核人材育成を目指す新人文社会系教育プログラムの構築」事業の一環。これまでに瀬戸内町、奄美市笠利町でも調査を実施。今回は石田准教授と兼城糸絵准教授が引率し、考古学と文化人類学を学ぶ2~4年のゼミ生が参加した。

 

 2日の聞き取り調査には幾里集落の70~80代4人が協力した。「門を入ったら奉安殿に最敬礼した」「戦後も食べ物がなく、ソテツのナリ(実)を食べた」「米軍からHBT(軍服)をもらい、仕立て直して正月に着た」などと戦中戦後の体験を語った。

 

 調査に参加した3年の千々和駿さん(20)は「当時の食事内容や受けた教育など、奄美独特の体験や子どもの目線の話が聞けたのが興味深かった。戦争体験を語れる世代が少なくなっているので、残していくために今後も活動したい」と話した。

 

 調査に応じた同集落の窪田圭喜さん(78)は「自分の子どもたちにも話していないこと、私たちの世代しか知らないこともある。口伝えだけでなく、文字に残してもらえることは貴重な資料になる」と感謝していた。

 

 今回の調査内容はポスターにまとめ、年明け以降に同町のりゅうがく館展示室に掲示する予定。