鹿大環境学研究会がシンポジウム

2019年01月13日

地域

奄美大島の住民らが「環境文化」について話し合ったシンポジウム=12日、大和村

奄美大島の住民らが「環境文化」について話し合ったシンポジウム=12日、大和村

 鹿児島大学の鹿児島環境学研究会は12日、大和村の村防災センターでシンポジウム「シマのくらし(環境文化)を考える」を開いた。地域住民の事例発表や移住者を交えたパネルディスカッションがあり、人と自然の関わりが育んだ暮らしの文化「環境文化」の価値や継承について語り合った。

 

 シンポジウムは奄美群島国立公園の特徴である「環境文化」をテーマに、昨年1月の龍郷町秋名・幾里地区での開催に続き2回目。世界自然遺産候補地の奄美大島で、文化景観や集落景観の価値について地域住民の認識向上を図る目的で企画。村内外から52人が来場した。

 

 プログラムは3部構成。第1部は龍郷町秋名、大和村国直、奄美市住用町の住民らがそれぞれの集落の取り組みを紹介した。

 

 秋名は稲作に由来する国指定の重要無形民俗文化財「秋名アラセツ行事」の保存継承について報告した。国直集落とNPO法人TAMASUの体験型観光の取り組みや、奄美市住用町市集落に伝わる同市無形民俗文化財「コメツキ踊り」の紹介もあった。

 

 第2部は3地区の高齢者と若者らが伝統行事の未来について語り合った。パネリストは八月踊り唄を歌える若手が少ないことや集落になじめない移住者がいること、集落外の人たちの協力を得ながら行事運営する現状などを指摘した。

 

 住用町見里の師玉当太さん(37)は従来の旧暦ではなく、人が集まりやすい土日開催など行事運営の変化を紹介し、「先輩たちの思いを次世代につなぐため、昔のやり方と今のやり方とうまくマッチングさせたい」と話した。

 

 第3部は移住者と移住受け入れに協力する地元住民が奄美大島の魅力を話し合った。茨城県から奄美市名瀬を経て秋名に移住した藤井菊美さん(45)は、イネ科の多年草で秋名でも栽培されているマコモに魅力を感じて移住したという。秋名の隈元已子区長(64)は「私は結婚を機に秋名に住んだ。それ以来、集落の人たちには大事にしてもらってきた。同じように移住者を受け入れたいと思っている」と語った。

 

 鹿児島大学の小栗有子准教授は「奄美大島の魅力の源泉に自然と人の営みがある。今回は集落や世代間、島内外のそれぞれ違う立場の人が自由に意見を言い合うことができた」と講評した。

 

 シンポジウムは環境省那覇自然環境事務所と県が共催した。