地方のピンチをチャンスへ 瀬戸内町 ワーケーション整備進む
2022年01月03日
地域
「地方のピンチは企業のチャンス」。新型コロナウイルス感染症の影響で、テレワークを活用して働きながら休暇を過ごす「ワーケーション」に注目が集まっている。鹿児島県瀬戸内町(奄美大島)ではマリンスポーツなどが盛んな観光地としての魅力を生かしつつ、企業との出会いを地域課題の解決にもつなげていこうと、町全体でテレワークの環境整備に力を入れ始めた。2022年には役場に隣接する町すこやか福祉センターにテレワーク拠点施設「HUB(ハブ)」がオープンする。さまざまな専門知識、技能、経験、人材を持つ企業・団体を呼び込み、交流を促進することで、新たなビジネス創出にもつなげていく狙いだ。
「ワーケーション」はワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、リゾート地や地方など、普段とは違った場所で一定期間、その土地ならではの活動を楽しみながら、必要に応じて仕事も行う仕組み。
コロナ禍で「密」を避けたテレワークや時差出勤が推奨される中、企業にとっては社員のリフレッシュやモチベーションアップ、有給休暇の取得率向上といった、主に福利厚生の一環として普及が進んでいる。
HUBは公衆無線LAN「Wi‐Fi(ワイファイ)」やワークスペース、プリンター、ロッカーといった仕事をする環境としての基本設備とは別に、町と企業の連携や、島外企業と地元企業、または島外企業同士の交流を推進する機能を併せ持つことが特徴だ。
指定管理協定を結んだブルースクールデザイン(同町清水)の河本雄太代表取締役(40)は「地域が抱える課題は民間企業にとっては新たなビジネスチャンスであり、行政との仕事の実績は企業が社会的な信頼を得るきっかけにもなる」と指摘。
「これまで気付いていなかった地元の魅力の発掘や、地域の新しい価値の創造、持続可能な循環の仕組みづくりで、地域課題の解決をデザインする場としたい」と意欲を見せた。
同町はHUBの開設のほか、民間のコワーキングスペース整備にも取り組んでいる。宿泊施設やカフェ、空き家の改修費助成事業を展開し、21年度内に嘉鉄、清水、宮前、網野子、西古見、加計呂麻島の俵にテレワークが可能なスペースがオープンする。
瀬戸内町が取り組むのは単なるテレワーク環境の提供ではなく、ビジネスとして課題の発掘を求める企業とのマッチングだ。企業にとって同町でのワーケーションがビジネス創出・交流の場となれば、地域振興や行政業務の効率化、環境対策など、地域が抱えるさまざまな課題はデメリットではなく、町の強みになるかもしれない。