「心の健康観察」で不登校対策 モデル校で実証スタート ICT活用で早期対応図る/奄美市
2025年02月19日
社会・経済

「心の健康観察」で不登校対策 モデル校で実証スタート ICT活用で早期対応図る/奄美市
不登校の児童生徒の増加を背景に、文部科学省は一人1台の端末を用いた「心の健康観察」を推進している。学校生活や家庭環境に関することなど、児童生徒が抱えるさまざまな悩みを早期に発見し、適切な支援につなげることが目的だ。奄美群島でも導入されつつある。奄美市で心の健康観察に取り組む現場を取材した。
■SOS発信しやすい環境を
心の健康観察は、文科省が2023年3月に策定した不登校対策「COCOLOプラン」に基づく。ICT活用により、児童生徒の心や体調の変化の早期発見を推進している。
南海日日新聞の取材によると、現在、奄美群島の自治体の実施状況は「全学校で実施」が1町、「一部実施または各学校の判断に任せている」が7市町村、「実施していない」が4町。
奄美市では25年度の新規事業「あまみ不登校対策プロジェクト」に心の健康観察を盛り込む。市教委によると24年10月末現在、市内の30日以上の長期欠席者は121人。このうち不登校は96人(小学生25人、中学生71人)に上る。
市教委は名瀬中学校、崎原小中学校を心の健康観察のモデル校に選定。両校で24年度末から25年度の1学期まで実証を行い、同学期末にある研修会での報告を経て、2学期から市内の全小中学校に取り組みを広げたい考えだ。
長岡哲仁指導主事は「子どもたちがSOSを出しやすい環境をつくりたい。『チーム学校』で対応し、みんなで確認していくことができたら」と話す。
■実証始めた名瀬中
名瀬中学校(木場敏朗校長、生徒206人)では2月5日から、主に1、2年生を対象に心の健康観察を開始。朝の学級活動の時間を使い、電子フォームにその日の体調や気分を入力する。生徒らが入力した情報は、同校の職員と市教委の指導主事にオンライン上で共有される。
内容は▽体の調子▽朝食の有無▽心の調子▽その理由・自由記述│など。心身の状態は天気マークで表示され、「晴れ」「晴れ時々曇り」「曇り」「雨」のうち、最も自分に当てはまるものを選択する。
12日の午前8時半ごろ、同校の1年生教室を訪れた。朝の学級活動で担任が心の健康観察の入力を促すと、生徒たちはおのおのタブレットを取り出して電子フォームを開き、その日の状況を慣れた様子で打ち込んでいた。3分ほどで全員が終了した。
現在は一斉実施だが、生徒が周りを気にせず入力でき、職員の負担も軽減できるよう、今後は生徒が登校後に各自で終わらせる方法に変えていくという。
■支援の仕組みづくりが課題
心の健康観察について、1年生に聞いたところ「いろんな人に自分の感情を知ってもらい話しやすくなるのでいい。悩みがあったら、関わりやすい先生につないでほしい」、「特に何とも思わない。(悩みがあったとしても)そっとしておいてほしい」、「相談するのは緊張するから、タブレットの方が伝えやすくなると思う。天気マークが分かりやすい」など反応はさまざま。
心身の状態を可視化することで、早期の声掛けや支援につながると期待される一方、具体的な支援の道筋が確立されていないのが課題だ。同校の坂元一善教頭は「生徒がSOSを発信しても、学校が対応しなければ(心の健康観察を)やる意味がない。どのような手だてをしていくのか、仕組みづくりが大切」と語った。
(餅田彩葉)