われらエラブネクストファーマーズ! 島内の若手農家ら結集、情報共有の場
2019年01月03日
社会・経済
2018年7月、農業の島沖永良部島で、若手農家ら有志による団体「エラブネクストファーマーズ(ENF)」が立ち上がった。和泊、知名両町の農家、新規就農希望者ら現在約20人のメンバーで構成。不定期に飲み会を開いて親睦を深め、就農希望者や若手農家同士の情報共有の場を設けている。1月19日には独身農家を対象とした男女の出会いイベントを開催する計画だ。一体どんな団体なのか、その親睦会に参加しつつ、活動を取材した。
◆設立趣旨
ENFの発起人は約3年前に夫婦で沖永良部島にIターンし、牛飼いとして働く知名町上平川の要秀人さん(36)。現在、同町住吉で知人の牛舎を借りて自分の牛9頭と、知人から委託された牛約30頭を飼育しているが、頼るつても特段ないまま島に移住した要さんにとって、新規就農までの道のりは決して平坦ではなかった。
畑地に限りがある沖永良部島では来たばかりの移住者に対し、先祖代々受け継ぐ土地を、すぐに貸してくれる人は決して多くない。「まずは地域に溶け込んで島の人を知り、島の人に自分を知ってもらうことから始めた」と振り返る。
要さんは「自分の経験から移住者が島で新規就農するには、何よりも地域の情報やネットワークが大切だと感じた。地元の農家や先輩移住者らとつながることのできる場があれば、就農を希望する移住者の力になれると思った」とENF設立の趣旨を語った。
◆活動内容
メインの活動はメンバーが集まっての親睦会。いわゆる「飲み会」だ。就農を目指す移住者にも積極的に声を掛け、誘っている。就農希望者にとっては貴重な情報収集の機会になるほか、地元の農家同士が親交を深める場にもなっている。
飲み会の参加メンバーは両町の農業青年クラブの会員や、そうした団体に所属していない農家、県・町職員などさまざま。自治体や団体の枠を超えた交流が行われている。
希望するメンバーで、島内のイベントに屋台を出店して焼き鳥を販売し、活動費を捻出。団体ホームページや会員制交流サイト(SNS)で活動の様子を発信し、島外の移住希望者らに対して島のPRも行っている。
中心メンバーの一人、知名町の勝馬直樹さん(36)は「自分たちがやりたいと思ったことを、賛同するメンバーで自発的にやっていくところが活動していて面白い」、和泊町の山下博志さん(35)も「楽しく島の農業を盛り上げられたらいいと思う。自分たち自身が楽しむことを大事にしている」とENFの活動の魅力を語った。
◆恋の収穫祭開催へ
そんなメンバーが次に企画しているのが男女の出会いイベント。「結婚願望はあっても、毎日家と畑の往復だけでは女性と出会う機会がない」「農家を対象に独身の男女が出会えるイベントを企画したら楽しそう。ゆくゆくは農家の担い手不足の解消や、島の人口減少対策にもつながる試みでは」
飲み会でのやりとりの中で発案され、多くのメンバーが賛同した。その後もイベント会議と称した飲み会を重ね、具体的な計画を立案。現在団体ホームページに特設ページを設けたり、チラシを作成したりして参加者を募集している。ENFの既婚のメンバーが中心にイベントの運営、進行を担い、独身のメンバーにはイベントへの参加を促している。
要さんは「ENFという農家の団体がこうしたイベントを開くことで農業のイメージアップや、活性化にもつながると思う。参加してくれる女性たちに農業や農家のことを知ってもらう機会にもなればうれしい」と話した。
ENFの今後の活躍に注目したい。