タンカン新品種登録へ 奄美市の平井さん発見

2018年08月29日

社会・経済 

新品種として登録出願された「平井Red」(右)と在来種「垂水1号」(提供写真)

新品種として登録出願された「平井Red」(右)と在来種「垂水1号」(提供写真)

 奄美市名瀬の果樹園で2013年に見つかった在来タンカンの枝変わり(突然変異体)が、新品種として2年後に登録される見通しとなった。果樹園を経営する平井學さん(70)が見つけ、長男の孝宜さん(37)と共に今年1月、「平井Red」の名称で農林水産省に出願。同省が今月14日付官報で公表した。枝変わりによるタンカンの品種登録出願は県内で初めて。着色や減酸が在来種よりも20日程度早く、1月中旬の収穫、出荷が見込めるという。地元市町村や県、JAなどは今後、奄美大島各地での試験栽培などを行う予定で、早ければ5年後の流通開始を目指す。

 

 13年1月に名瀬の本茶峠近くにある果樹園で鳥害の確認作業を行っていた學さんが、果皮の色が濃い果実が着果している枝を発見。県農業開発総合センター大島支場が品種登録に向け13~18年、「原木」と「接ぎ木で増やした2代目の苗木」の果実や樹体の特性を調査してきた。

 

 その結果、1月中旬の糖度は10~11度で在来種「垂水1号」と同程度となる一方、果皮は完全に着色して紅の濃い鮮やかなだいだい色となり、クエン酸は0・8%以下で垂水1号よりも低くなることが判明した。

 

 平井さん親子は28日、同市名瀬の同支場で経緯を説明した。「枝変わりの品種登録出願は奄美では例がなく、感無量」(學さん)、「在来種と合わせ、かんきつ産地の活性化が期待できる」(孝宜さん)と感想を述べた。

 

 関係者も「収穫期が在来種よりも早まることから労力が分散され、栽培面積の拡大につながる」と、期待されるメリットを挙げた。今後は本土で苗木の増殖を行い、19年の秋ごろには島内各地で試験栽培に着手する予定。標高など栽培エリアの適性も調査するという。

 

 奄美大島では年末に出荷が可能な中晩柑「津之輝」の導入も進んでいる。JAなど関係機関は「1月に出荷できる平井Redの定着で、津之輝を出荷する年末から在来タンカン収穫期の2、3月にかけ、かんきつのリレー出荷体制も構築できる」とし、奄美産かんきつの販売や雇用期間の拡大にも期待している。

平井學さん(左)、孝宜さん親子=28日、奄美市名瀬

平井學さん(左)、孝宜さん親子=28日、奄美市名瀬