トゲネズミの特徴解説 城ヶ原沖縄大教授らが講演 最新の研究も紹介 奄美博物館

2022年10月07日

社会・経済 

トゲネズミの最新の研究などについて説明した沖縄大学の城ヶ原教授=5日、奄美市名瀬

奄美博物館と沖縄大学の共同企画「アマミトゲネズミ講演会」が5日、奄美市名瀬の同博物館であった。地元住民など約30人が参加。同博物館学芸員の平城達哉さんと沖縄大学の城ヶ原貴通教授が講師を務め、奄美大島と徳之島、沖縄島北部のみに生息するトゲネズミの生態や保護の取り組み、最新の研究内容などについて講演した。

 

アマミトゲネズミの研究や調査について地元住民にも知ってもらい、奄美の貴重な固有種としての知名度を高めようと開催。講演会にはトゲネズミの繁殖・飼育に取り組む全国の動物園関係者らも参加した。

 

講演会では、平城さんがトゲネズミの生息域や体の特徴、ハブの攻撃を避ける特徴的な行動などについて解説。自然の中で保護する生息域内保全と、動物園などで繁殖・飼育する生息域外保全の取り組みなども紹介した。

 

後半は城ヶ原教授が「アマミトゲネズミの最近~生物進化は面白い!~」と題して講演。奄美大島、徳之島、沖縄島北部のトゲネズミの遺伝的な違いや分布状況について説明した。各生息域で実施した調査では、トゲネズミが夏の終わりから1月ごろにかけて繁殖することや、年間を通してイタジイを主な餌としていることなどが明らかになったと報告した。

 

このほか、最新技術を活用して現在進められている研究として、トゲネズミの人工多能性幹(iPS)細胞を持つマウス(実験用のネズミ)を使った実験について紹介。トゲネズミの精子・卵子のでき方や受精の仕組み、性の決定などに関するさまざまな謎の解明につながると期待されているという。城ヶ原教授は「いろいろな分野で研究が展開されているトゲネズミは、世界の研究者たちも注目している」と強調した。

 

講演会に参加した大冨将範さん(44)=同市名瀬=は「トゲネズミの性の決定の仕組みがまだ謎だと初めて知り、生命の神秘を秘めた動物が身近にいるということに驚いた」と感想を話した。

 

同博物館では6日、トゲネズミの生息域外保全に関する飼育管理検討会も行われ、環境省や日本動物園水族館協会(JAZA)の関係者らが出席した。