大島紬の新境地開拓へ 米マンハッタンで展示 若手職人発ブランド
2024年05月11日
社会・経済
大島紬の若手職人でつくる「本場奄美大島紬NEXTプロジェクト」発ブランド「age!!」の2024年新商品、箔(はく)大島「月と太陽」が4月10~15日、米ニューヨーク・マンハッタン地区であったモダン着物の展示会でメイン展示を飾った。同ブランドのコンセプト「No Border(境界なし)、Unique evolution(独自の進化)」を体現した男女兼用の先進的な紬は会場説明で、「モダンかつ上品な美しさをまとった傑作。何世代にもわたって受け継がれた職人技の魂を継承する」と紹介され、多くの来場者の目を引いた。
亀甲柄の大島紬に純白金(プラチナ)が箔押しされた「月」(藍染め)と純金が箔押しされた「太陽」(泥染め)は、月と太陽が昼を奪い合う喜界島の昔話から着想を得て制作。和装デザイナーのウエオカタロー氏がデザイン。大島紬の若手職人たちがすべて手作業の本場奄美大島紬制作の30~40工程を担い、京都・嵯峨嵐山の金彩工房takenaka kinsaiが箔押しをした。
ウエオカ氏が手掛ける東京原宿の着物・浴衣ブランド「ROBE JAPONICA(ローブ・ジャポニカ)」初となるニューヨークでの展示会のために同プロジェクトが貸し出した。会場はマンハッタン中心地にあるビル内の「Globus Washitsu(グローバス和室)」。約200人が来場し、現物購入希望者も出るなど好評だった。
同プロジェクトのリーダー南晋吾さん(43)=龍郷町=は「着物姿で来場される方も多かったと聞いた。(大島紬を取り巻く環境は厳しいが)先入観を持たずにニーズを拾い、諦めずに販路を拡大したい。プロジェクトは現在第3弾を実施中。若い人が値段を気にせず『これはいい』と一目ぼれするようなものを作り、若い職人に還元できるような好循環を目指したい」と語った。
「月と太陽」はそれぞれ受注商品となっており、同プロジェクトのホームページなどで注文を受け付けている。今年1月には、東京都のギャラリーで展示・受注会を開いた。
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本場奄美大島紬NEXTプロジェクト 2017年、大島紬の需要拡大や若手技術者の育成などに取り組む本場奄美大島紬協同組合青年部会に所属する男女11人で発足。きっかけは、織り技術者だった20代の移住者が機織りの工賃だけでは生活ができずに本土に帰ったことだった。
デザインだけではなく、流通や販売方法を含めて従来の慣習とは違うものをつくろうと模索中。インターネットで出資を募るクラウドファンディングや国の補助金なども活用してこれまで、反物の制作(第1弾)やアーティストとコラボレーションした商品開発(第2弾)などを実施。地元の子どもたちへ大島紬の授業や着付け体験教室なども行っている。
ブランド「age!!」には、感嘆した時に飛び出す島人の叫び声アゲーを当てた「びっくりしてほしい」と、「着る人見る人の気分を上げる」「年齢(age)性別関係なく着れる」の三つの思いが込められている。
(南郷 侑)