天然温泉リゾート誕生へ 大和村 行政協力、波及効果を期待

2022年01月03日

社会・経済 

掘り当てた温泉を紹介する浜崎社長(左)と伊集院村長=2021年11月6日、鹿児島県大和村大棚

 

鹿児島県大和村大棚(奄美大島)で現在、天然温泉を目玉とした観光施設の整備が進められている。メインとなる温泉大浴場や温水レジャープールなどは2023年夏にオープン予定で、キャンプや日帰りでバーベキューなどを楽しむことができるエリアなども整備する計画。施設整備を進めているのは、同村出身の浜崎哲義さん(63)が社長を務める総合美術会社グレイ美術(本社・東京)。同社と立地協定を結んだ大和村は、これらの施設を地域活性化の起爆剤とし、交流人口を増やし定住人口拡大にもつなげたいと大きな期待を寄せている。

温泉掘削工事の地鎮祭=2021年3月16日

■ふるさとへの思い

 

温泉が湧き出た場所は、大和村大棚のグレイ美術が所有する土地。浜崎社長は「ふるさと大和村の活性化につながることができないか」と考え、東シナ海に面したこの地に2005年、多目的オープンスタジオ「奄美ハナハナ」を開設。敷地は山林を含め約23㌶で、映画やテレビドラマのロケや音楽イベントなどに活用された。

 

19年に敷地内で地質調査を実施したところ、温泉が出る可能性が高いことが確認され、観光施設整備に向けて20年10月に大和村と立地協定を締結した。村側は施設整備に伴う手続きや施設完成後の誘客などで協力する。

 

温泉掘削工事は21年3月に始まり、同年9月2日に地下約1600メートル地点で良質な温泉を掘り当てた。分析結果によると、泉温40・1度で泉質は弱アルカリ性。

 

21年11月の温泉湧出報告会で、浜崎社長は「島で温泉を掘ることに懐疑的な声もあった中、『絶対に出る』と信じてやってきた。素晴らしい自然の景観、魅力を島内外へ発信できるよう、しっかりした施設を整備し、大和村に人の流れをつくっていきたい」と述べ、伊集院幼村長も「大和村、そして奄美にとって画期的なこと。利用者に親しまれる温泉となるよう行政としても協力していきたい」と喜んだ。

温泉・プールレジャーエリア配置計画図(グレイ美術提供)

■交流人口拡大へ

観光施設の名称は「奄美温泉 大和 ハナハナビーチリゾート」。計画では温泉大浴場・温泉プールエリア(敷地面積約8000平方メートル)のほか、ファミリーキャンプサイト、バーベキューサイト、手間いらずで手軽に豪華なキャンプが楽しめる「グランピング」サイトも整備する予定。

 

浜崎社長は「奄美の自然の良さを生かしながら観光客と島の方々との交流の場も含めた美しいリゾート施設にしたい。観光客には、ゆったりと流れるシマの時間を過ごしてもらい、地元の人々には温泉場やサウナで観光客に奄美の魅力を語ってもらえたら面白いのではないかと思っている」とし、「グランピング・キャンプサイトで一部宿泊客を受け入れ、運営や収益が安定してから将来的にワンランク上の宿泊施設(露天風呂付きヴィラ宿泊棟)も展開したい」と将来の構想を語った。

 

事業費については「まだ検討段階だが、温泉レジャー施設、グランピングエリアなどを含めた総事業費は、温泉掘削関係の1億8000万円を含め10億円程度になるのでは」と語った。

 

大和村企画観光課によると、18年に放送されたNHK大河ドラマ「西郷どん」のロケ地として村内の宮古崎が注目を集め、昨年夏の世界自然遺産登録もあって村を訪れる観光客は増加傾向にある。今年度中には同村と奄美市を結ぶ宮古崎トンネル(延長2316メートル)が供用開始予定でアクセスが向上するほか、大和村はアマミノクロウサギの研究飼育施設の整備も計画している。企画観光課の担当者は「温泉・レジャー施設が整備されると、村の魅力がさらに高まり、訪れる人が増える。交流人口や、地域と多様な形で関わる『関係人口』を増やし、定住人口の拡大にもつなげたい」と波及効果にも期待していた。