松くい虫被害、奄美大島全域に拡大
2014年05月21日
社会・経済
県大島支庁林務水産課がまとめた「松くい虫被害の発生状況」(2014年3月末現在)によると、奄美全体の被害容量は7万6300立方㍍(前年同期比3200立方㍍増)で、奄美大島では島内全域に広がり、13年度中に徳之島町と和泊町でも新たに被害が確認された。松の枯死が進む瀬戸内町などでは広葉樹の成長が進む一方、梅雨時期に入り、雨で水を含んだ松枯れ被害木の倒木による生活圏への影響が懸念されている。各市町村など関係機関が住民に注意を呼び掛けている。 奄美での松枯れ被害は、1990年代に瀬戸内町加計呂麻島で初確認された。その後、奄美大島を北上し、徳之島以南にも広がりをみせている。 14年3月末現在の被害容量を前年同期と比べると、知名町が5・9倍、奄美市笠利町が5・0倍、龍郷町が4・2倍に増えている。松枯れが進行する瀬戸内町や宇検村、奄美市住用町では枯死した松が増えて統計上の被害容量は減少した。 奄美での松くい虫対策は、枯れた松を伐採してビニールで包み、薬剤で薫蒸する伐倒駆除が主流。効果が期待できる薬剤の空中散布は、ルリカケスやオオトラツグミなど希少な鳥類が食べる昆虫の減少につながるとして、国の防除実施基準により行われていない。 県や各市町村が被害の最先端地域や生活圏周辺で枯れ松が倒れる可能性が高い地域を優先して防除に取り組む中、今年に入って奄美市などでは民家裏山や道路沿いの枯れ松が倒れて道路をふさいだり、電線を切断した事案が発生している。 (写真:住宅裏山の枯れ松が折れて倒れ、電線を切断した現場=2014年2月、奄美市名瀬)