活性化期待、不安も 2年ぶりクルーズ船寄港 「うれしいけど、手放しには~」 奄美市内の事業者ら
2022年04月13日
社会・経済
「うれしいけど、手放しには喜びづらい」。クルーズ船「にっぽん丸」が奄美市の名瀬港に寄港した12日、同市内の観光、商業関係者は複雑な心境をのぞかせた。約2年ぶりのクルーズ船寄港を契機に地域経済活性化へ期待が高まる一方、新型コロナウイルス感染症への不安も拭えない。
市紬観光課によると、12日に寄港した同船の乗船客160人は、一部が島内観光ツアーに繰り出し、島の自然を満喫するメニューや観光地を巡るルートなどを楽しんだ。残る乗船客は船内で過ごしつつ、名瀬市街地などを散策した。
島北部を巡るツアーに伴い、乗船客約30人が立ち寄った同市笠利町のリゾート施設ばしゃ山村では、感染対策を施しながら昼食を提供した。施設側によると、まん延防止等重点措置が解除された3月以降、ツアー団体の予約、利用は回復傾向にあるという。
「観光関連業者として、クルーズ船寄港再開は明るい話題」と同施設の奥圭太取締役は語ったが、続けて「コロナ禍も3年目。今年こそ〝世界自然遺産登録効果〟に期待したいところだが、来島者増に感染リスクを感じる部分も少なからずある」と懸念も示した。
島内各地で乗船客の観光ツアーが展開された一方、同市中心部の名瀬中央通りアーケード商店街でにぎわう様子は見られず、クルーズ船寄港を実感する声も少なかった。いつもとほぼ変わらない人通りの中、クルーズ船寄港を知らなかったという店主も複数いた。
同商店街振興組合理事長を務める雑貨店「生活彩館」の松尾典昭店長は「(クルーズ船寄港は)そういえば数日前の新聞で見たが、忘れていた。開店前に観光客らしき通行人も見掛けたが、今思えばクルーズ船から来ていたのかも」と語った。
商店街関係者によると、コロナ禍以前のクルーズ船寄港時は、市から関係団体を通じて各店舗に連絡があり、寄港に合わせた開店時間前倒しや仕入れ調整につなげていたが、今回は市から連合会へ寄港の知らせがなかったという。
市紬観光課の担当者は「周知不足だった。感染状況が落ち着いて、送迎セレモニーを再開する際などには、関係機関と連携し、地元事業者とともに盛り上げていきたい」と話した。