農業の島の農家民泊 沖永良部

2018年01月02日

社会・経済 

農家民泊「ブルー・オーシャン」を営む横山夫妻=17年12月8日、知名町知名

農家民泊「ブルー・オーシャン」を営む横山夫妻=17年12月8日、知名町知名

  1月から放送されるNHK大河ドラマ「西郷どん」や、夏頃にも登録が予定される「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産など、奄美への交流人口拡大の絶好の機会が到来する2018年。奄美各島で観光客の受け入れ態勢の整備が進む中、宿泊施設の確保が課題となっている。打開策の一つに各自治体が導入を進めている農家民泊がある。地元の人たちと交流し、島の暮らしを体験できる農家民泊は、近年、旅行者の注目を集めており、奄美で増加傾向の外国人観光客にも人気がある。その魅力は実際にどのようなものか。農業の島・沖永良部島の農家民泊を取材した。

 

◆島の暮らし伝えたい 「ブルー・オーシャン」の横山さん

 

  知名町知名の農家民泊「ブルー・オーシャン」は、その名の通り太平洋を見渡せる小高い所にある。オーナーの横山彰さん(69)は元町職員。定年退職後、自宅を新築し、以前住んでいた住居を宿泊所に活用した。2015年夏から妻のオトエさんと農家民泊を営んでいる。

 

 宿から1キロ未満の所にある農園「アヴニール・ファーム」では、バレイショやグラジオラス、サトウキビなどを栽培。宿泊者が希望すれば、さまざまな農業体験も可能だ。

 

 高齢化や人口減少などで後継者不足が課題の沖永良部島の農業。横山さんが農家民泊を始めたのも、そうした島の課題解消に「少しでも役立てば」との思いから。インターンシップなどで来島する大学生ら若者を中心に受け入れ、島の暮らしや農業体験を通じ、その魅力を知ってもらおうと考えたのがきっかけだった。

 

 だが実際に始めてみると、島内の宿泊施設には限りがあり、この宿が町の中心部で利便も良いことから、観光客のほかビジネス客など、幅広い世代・目的の人が利用してくれているという。

 

 オトエさんのアイデアで始めた「宿泊ノート」は、用事や要望などを客とやりとりする際に活用。宿泊した感想や、感謝の言葉をつづる人もいて、オーナー夫妻のやる気の源になっている。

 

 「夏場は庭で一緒に酒を飲みながら宴会したり、楽しい思い出はたくさんある。若い人たちと交流すると自分も気持ちが若返るよ」と話す横山さん。今後も農家民泊を通じて島を盛り立てる。

 

【基本情報】▽ブルー・オーシャン 洋室2室、和室2室(定員10人)。素泊まりで、料金は1泊当たり大人2800円。3歳以下500円。電話0997(93)2811。知名町知名475の1。

 

◆人との出会いが魅力 「菜の花」のオーナー宮西さん

 

  知名町徳時に農家民泊「菜の花」はある。沖永良部空港とは島のほぼ反対側に位置する。普段は人口の少ない静かな場所だが、集落の中心に四並蔵神社があり、毎年夏には奉納相撲大会でにぎわう。

 

 周辺には県指定天然記念物に指定されている鍾乳洞(昇竜洞)や、住吉の暗川(クラゴー)、屋子母ビーチ、大津勘のビーチロックなど観光スポットも多い。

 

 オーナーの宮西ケイ子さん(68)はもともと営んでいた弁当屋を息子の妻に代わってもらい、昨年8月から念願だった農家民泊を開業した。

 

 旅行者の受け皿整備を進める町の施策として農家民泊の導入が推進されており、「マンゴーやジャガイモ、サトウキビなども作っているのでちょうどいい。初めてで不安もあるが、地域にも役立つならば」との思いだった。

 

 「実際にやってみると楽しいことばかり」と宮西さん。元気な大学生ら7人が3泊4日で宿泊した際は、地元の唄者に三味線を弾いてもらい庭で一緒に遊んだことも。

 

 沖永良部島出身の家族連れは「1泊ではもったいない。もっと泊まりたかった」。徳之島から来た新婚夫妻は「お腹の子が産まれたら一緒にまた来ます」と言い、宿を離れた。

 

 「人との出会いが魅力。お客さんがいろいろな話をしてくれるからとても楽しいし、私も島のことをたくさん伝えている」と語る横山さん。「沖永良部島を好きになってくれる人を少しでも増やせたら」。そんな思いで農家民泊を営んでいる。

 

【基本情報】▽菜の花 洋室2室・1日1組限定(定員5人、1人から宿泊可)。料金は1泊2食付き大人6500円、小学生4500円、未就学児無料(保護者同伴)。電話0997(93)3241。知名町徳時1396の1。

「人との出会いが農家民泊を営む魅力」と語る「菜の花」のオーナー・宮西ケイ子さん=17年12月9日、知名町徳時

「人との出会いが農家民泊を営む魅力」と語る「菜の花」のオーナー・宮西ケイ子さん=17年12月9日、知名町徳時