通常営業きょうから再開 期待と不安、複雑な心境 奄美の飲食業関係者
2021年10月01日
社会・経済
県が新型コロナウイルス対策をめぐり、県内全市町村の飲食店に要請していた時間短縮営業が9月30日で終了し、1日から通常営業が可能になった。8月20日からの時短要請期間は1カ月以上。奄美では臨時休業する店舗も多かったため、関係者にとっては待望の再開となる。ただ、すぐに客足が戻るかは不透明で、感染再拡大の懸念も付きまとう。もろ手を挙げて喜べない現状に経営者らは不安も抱えている。
奄美市名瀬の繁華街・屋仁川通りにある奄美料理黒酎ダイニング纏(まとい)では30日午後、スタッフが仕込み作業に追われていた。店主の海老原寛樹さん(39)は「通常営業初日の予約が入って正直ほっとしている」と笑顔を見せ、「通常営業になれば逆に時短営業中よりも密を避けることができ、お客さんにゆっくり楽しんでもらえると思う。感染対策はこれまで通り、できることを徹底するだけ」と気を引き締めた。
飲食店との結び付きが強い酒販業者の期待も大きい。「お客さんあっての酒販。長く続いているこの厳しい状況が変わればいい」と話すのは、同通りにある玉城食糧売店代表の玉城隼次さん(37)。「取引先からの注文に今のところ大きな動きはない。各店舗とも地元のお客さんの動向をうかがっているようだ。特にスナックはお客さんの入りが読めない」とも語った。
感染者が急増した徳之島の飲食店に対しては、8月16日から県が先行して時短営業を要請していた。
営業を再開するという徳之島町亀津でバーを経営する男性(50代)は「前回(昨年12月)営業を自粛した時よりも島内での感染者数が多く、何より40日以上と期間が長かった。ようやく店を開けられるとほっとしている」と安堵(あんど)する一方で、「万が一を思うとカラオケの全面再開は怖い。しばらくは部屋数や人数を制限しながら様子を見たい。今年こそは忘年会シーズンを無事に迎えられるよう願っている」と警戒感も示した。
知名町の飲食店20店舗以上が加盟する小米飲食業振興会の田辺収一会長(67)は「時短要請の影響を受け、会員でも特にスナックなど2次会の利用が多い店が大変だった。協力金は固定費と従業員への給料を払えば、ほとんど残らない。やっと通常営業ができる」と喜んでいた。
田辺会長が経営する焼き肉店とカラオケ店も1日から通常営業に戻す。「島の人が家飲みに慣れた中、客足はすぐには戻らないだろう。観光客が増えてくると、コロナの感染がまた広がらないかという不安もある」と複雑な心境も口にした。