離島の医療守る議論 飛行時間増、民間搬送に意見 奄美ドクヘリ運航調整委
2023年11月15日
社会・経済
奄美ドクターヘリ運航調整委員会(委員長・福元俊孝県立病院局事業管理者)の2023年度会合が13日、奄美市名瀬の県立大島病院救命救急センター研修ホールであり、22年度出動実績報告書などを承認した。要請件数は362件と前年度比38件減の一方で、総飛行時間は約328時間と前年度より約84時間長かった。県本土や沖縄などの長距離搬送が増加したのが主な理由。会議ではドクヘリの適用範囲に関する問題提起もあり、離島の航空医療体制についての議論に多くの時間が割かれた。
報告書によると、22年度の奄美ドクターヘリ運航は終日運航341日、一部運休14日、終日運休10日。要請件数362件のうち不出動は130件。出動件数232件の内訳は現場出動73件、施設間搬送139件、出動後キャンセル20件。
患者の搬送先は群島内が131人、群島外は県本土が58人、沖縄が15人の計204人。総飛行時間は全国平均(約219時間)の約1・5倍。1出動当たりの平均飛行時間は約85分で全国平均(約26分)の3倍超だった。
会議では県立大島病院の中村健太郎救命救急センター長が、消防・医療部会で挙がった課題を報告。救急車搬送が困難な地域も点在し、重症度や緊急度が高くない事案の施設間搬送にドクヘリが利用される事例が一定数あり「総飛行時間の増加」や「(不出動の要因の一つ)重複要請の増加」につながると指摘。「代替手段も検討し、あるべき離島航空医療体制を考えたい」と問題提起した。
委員からは▽飛行時間に応じた厚生労働省の補助金制度▽県本土の病院や沖縄県のNPO法人が提供する民間搬送▽広域事務組合で民間搬送に公的資金投入の意見があったこと―などの紹介があった。
福元委員長は「皆で考える会を県が音頭を取って立ち上げてはどうか」と投げ掛けた。県担当課は「(救急医療を外れ緊急性のない事案は)地元病院や早めに船での搬送をお願いしている。まずは地元で体制を考えてほしい」と返すにとどめた。
中村センター長は「奄美の航空医療提供体制の課題を関係機関が集まる場で提起でき、大きな一歩となった。今後も協力し、よい医療体制を構築したい」と話した。