16年続く大島紬ツアー 大島紬美術館と日本和装

2021年10月26日

社会・経済 

今年も実現した大島紬を着て奄美大島を訪ねるツアー=23日、奄美市笠利町のホテル「ティダムーン」

    奄美大島訪問で16年続く大島紬のツアーがある。今年も大島紬を着た20人が23日から2泊3日の日程で島を巡った。継続できる理由は三つ。①「奄美と紬と田中一村」をワンセットにした分かりやすいメニュー②生産者ときもの関連企業、消費者が一体となった取り組みをビジネスとして確立したこと③量より質を大事にする温かいもてなし。地場産品と観光を結び付けるビジネスは、他の業種も参考になる奄美型観光の一つのモデルといえそうだ。

 

 取り組んでいるのは大島紬の製造販売を手掛ける奄美市笠利町の大島紬美術館と全国できものの販促代理業や教育指導などを展開する日本和装ホールディングス(本社東京)。2005年から毎年5~10人で奄美大島を訪れ、紬の製造工程や奄美の歴史、文化、食などに触れている。全員大島紬を着て、日本画家田中一村の作品や生き方について学ぶ。

 

 23日も奄美大島の世界自然遺産登録と本場奄美大島紬協組創立120周年を祝って名古屋から40~80代までの女性20人が来島。大島紬美術館の関連企業ホテル「ティダムーン」に宿泊しながら2泊3日の旅を楽しんだ。新型コロナウイルス予防策としてワクチン2回接種済みとマスク着用を義務付けて実施した。

 

 この種のツアーは各地で見られるが、両社の特徴は16年にわたり継続し、何度も訪れるリピーターが多いこと。なぜ、持続可能なのか。日本和装ホールディングスの藤永新一顧問(57)は「まず大島紬が魅力的であること。工程が複雑で日本を代表するブランドであり、軽くて着やすく、旅行するにもいい」と、ツアーの本丸である商品価値の高さを強調する。

 

 大島紬を十数着持ち、奄美は3度目という名古屋市の坂本早苗さんは、大島紬の魅力に加え大島紬美術館の肥後勝代社長の肩に手を添え「この人がいいから」とほほ笑む。地元の温かい人柄ともてなしを意味する。肥後社長は大の一村ファン。作品も保有し、全国各地の催事では必ず一村をアピールする。著作権承継者の許可を得て一村原案の大島紬を製造、自社ホテルに「一村スイート」も整備。「奄美大島・大島紬・一村」をワンセットで発信し続ける。

 

 民間企業の場合、優れた取り組みであっても利益を上げ、ビジネスとして確立しなければとん挫する。両社の場合、ツアーに地元での展示即売会を組み込む。問屋を入れないため、産地│消費者直結で価格を抑える。少人数でじっくり奄美の旅を楽しみ、産地で紬の製造に触れた上で製品も買ってもらう。量より質を重視したビジネスで利益を確保する戦略だ。

 

 藤永顧問は今後の大島紬について「若い人も興味の持てる商品開発が課題」と指摘。肥後社長は「奄美と一村と大島紬を一人でも多くの人に伝えたい」と話す。