「徳之島牛」生産へ 肥育モデル事業始動

2020年06月08日

社会・経済 

徳之島町の委託事業で肥育されている子牛=6日、同町南原

徳之島町の委託事業で肥育されている子牛=6日、同町南原

  徳之島町は今年度から、町内で生まれた子牛の肥育委託事業を進めている。町内の畜産農家3戸で6頭を飼育し、町内産の農産物を活用した独自の飼料も与え、県内の肥育農家が育てた牛と品質を比較検証する。肥育に関するデータを集積して徳之島に合った肥育モデルを確立し、繁殖から肥育まで島内で完結する「徳之島牛」の生産につなげたい考えだ。

 

 徳之島では、サトウキビを中心に肉用牛繁殖やバレイショなどの園芸作物を組み合わせた複合経営が行われている。徳之島町では約190戸の農家が肉用牛の繁殖に携わり、昨年は1562頭の子牛を競りに出した。出荷した子牛は、全国各地でブランド牛として飼育されている。

 

 飼料確保などの観点から離島での肥育は不向きとされてきたが、沖縄県石垣島など八重山地方で「石垣牛」が生産されていることから、畜産振興を目的に子牛の肥育にも試験的に取り組むことを決めた。事業は2年間で、総事業費は約1900万円。

 

 今年度は血統の良い受精卵から生まれた2頭を含む6頭の子牛を、町内の3農家へ2頭ずつ委託。各農家は、JA県経済連のマニュアルを参考に肥育に取り組む。徳之島の特色を出すため、鹿児島大学共同獣医学部と連携し、糖蜜に島内産の未利用農産物を配合した飼料を餌に加え、他産地と肉質の差別化を目指す。

 

 同町亀津の畜産農家、直新吾さん(46)は「以前から繁殖した牛を島内で肥育できないかと考えていた。肥育は初めてで戸惑うこともあると思うが、専門家の意見を聞いていい牛を育てたい」と意気込んだ。

 

 肥育した牛は来年11月ごろ出荷し、町ふるさと納税の返礼品として発送する。町農業祭での試食イベントや学校給食での提供も計画している。

 

 町農林水産課は「徳之島で良質な牛が肥育可能となれば、徳之島産の牛のPRや観光振興も期待できる。島内で肥育できる道筋を示すことで畜産農家の経営の選択肢を増やし、所得向上につなげたい」としている。