タクシー運賃引き上げか 奄美地区で31年ぶり 与論の事業者が申請

2023年09月06日

社会・経済 

初乗り運賃「520円」を表示するタクシーの料金メーター=5日、奄美市名瀬

九州運輸局は4日、与論町でタクシー事業を行っている南陸運から運賃改定の申請があったと発表した。奄美地区(奄美群島内)の初乗り運賃を現行520円(1.3キロまで)から650円(同)に引き上げ、走行距離当たりの加算運賃も上乗せする内容。地区内のタクシー事業所を取り巻く環境は、燃料代を含む物価高騰などに伴うコストの上昇で疲弊しており、同業他社から同じく申請が出た場合、早ければ来年に値上げとなる見通し。決定した場合は1993年以来31年ぶりの運賃改定となる。

 

九州運輸局によると、1日現在、奄美地区のタクシー事業者は25社で、保有台数は合計207台。運賃改定は93年10月を最後に、消費増税分を除いて行われていない。運転手不足や燃料費高騰の影響が重く、各社は経営・待遇改善が課題となっている。

 

申請では初乗り運賃引き上げのほか、「402メートルごとに90円(小型)」「388メートルごとに90円(中型)」と車両の大きさにより区分している加算運賃を統一し、「369メートルごとに100円」へ改定するよう求めている。

 

同社役員の南有隆奄美自動車連合会長は「幅広く物価が高騰し、離島の輸送費負担も重なる中、現行の運賃を維持するのは難しい」と説明。同業他社の動向については「苦境は同じだと聞くが、申請するかは各社判断」としている。

 

一方、群島内で人口が最も多い奄美大島でも、複数のタクシー事業者が運賃改定の申請を検討しているもよう。値上げについて乗車需要低迷への懸念も聞かれるが、それ以上に「経費がふくらみ、賃金水準は低いまま」「運賃を上げないと業界が存続できない」と切実な思いが強いのが現状だ。

 

奄美地区の運賃改定へ向けては、11月末までに申請した事業者の合計保有台数が地区全体の7割を超えれば、審査を含む手続きが始まる。手続きに要する期間は半年余り。各社の申請は奄美自動車連合会(事務所奄美市名瀬)が窓口となり、九州運輸局に提出する。

 

県内は奄美地区のほか鹿児島A地区(主に本土)と同B地区(西之表市、熊毛郡、鹿児島郡)があり、この2地区の初乗り運賃は700円となっている。