今月から着用努力義務 罰則なし、浸透どこまで 自転車ヘルメット

2023年04月02日

社会・経済 

すべての人の着用が努力義務化された自転車のヘルメット=3月30日、奄美市名瀬

自転車を運転する際のヘルメット着用が1日から年齢を問わず、すべての人に努力義務化された。13歳未満の子どもに着用させるよう、保護者への努力を求めていた道交法を改正。奄美市の中心街で自転車を利用する人に話を聞くと、「当然の流れ」と前向きな声がある一方「罰則がないなら着けない」などと消極的な意見も多くあった。制度がどこまで浸透するか、動向を注視したい。

 

■なぜ努力義務に

 

法改正には、自転車の死亡事故が全国で多発する中、ヘルメットで命を守ろうという狙いがある。警視庁の過去5年間の統計(2018~22年)によると、東京都で自転車事故により死亡した人の約7割が頭部に致命傷を負っているほか、致死率が着用していた人の0・12%に対し、非着用の人は0・27%で約2・3倍高かった。県内では昨年、自転車事故で3人が亡くなっており、すべての人がヘルメットをかぶっていなかった。

 

■街の反応、課題も

 

同市名瀬の20代男性は「時代的には当然の流れ。通勤用に4月上旬までには購入予定」と法改正に理解を示す。すでに3月中にヘルメットをかぶっていた70代男性は「統計を見ても、自分の身を守るために必要なこと」と話した。

 

一方、非着用でも罰則はないことから、制度の浸透そのものが課題だ。「暑い」「髪型が崩れる」「置き場所に困る」―など、着用に消極的な意見も多く聞かれた。市内の女子生徒(16)は「中学を卒業するまで着用していたが、正直面倒だと思っていた。着けないといけないのは嫌だな」と語った。

 

他にも「自治体から補助金が出れば購入する」「周りの人が着けていたら考える」「ヘルメットの前に道路の改装を」などの声もあった。

 

■教育現場は

 

大島教育事務所は先月までに、群島内市町村の教育委員会に法改正を通知。奄美市教委は、17年3月に施行された「かごしま県民のための自転車の安全で適正な利用に関する条例」に基づき、小中学生のヘルメット着用と損害賠償保険などの加入を義務付けている。

 

昨年度は約半数の生徒が自転車通学の申請をしたという奄美市名瀬の県立大島高校では、新入生には入学説明会で、在校生には終業式でヘルメットの着用を強く推奨。ただし、各家庭の事情を考慮し、通学条件にはしないという。

 

肥後雄二教頭は「特に新学期は軽微な事故が目立つ。生徒には注意し過ぎるくらいの意識で通学してほしく、その一環としてヘルメット着用を勧めている」と話した。

 

■品薄状態も

 

龍郷町の商業施設ビッグツーでは、自転車を販売する際に法改正を伝えてヘルメットの購入も推奨。ヘルメットを求めて来店する利用客も前年度から倍増した。特に女性の購入者が多く、デザイン性の高い商品から売れていくという。3月半ばから品薄状態が続いている。

 

一方奄美大島の自転車販売店は「単価が高い割に売れないので仕入れを控えている」と困惑。担当者は「生活用品の物価が上がっている中、義務でなければちゅうちょする人もいるのでは」と語った。

 

■着用呼び掛け

 

奄美署交通課の上牧瀬肇課長は「ヘルメットを着けない場合の致死率を見ると、着用の必要性は明らか」と強調。ヘルメットの効果を示し「大人も子どもも、自分の命を守るために着用しましょう」と呼び掛けている。