「どこにある」「困る人も」 公衆電話、NTTが撤去加速へ

2022年07月08日

社会・経済 

NTTが大幅削減の方針を示している公衆電話=7日、奄美市名瀬幸町(この電話が削減対象かは不明)

全国に約10万9千台設置されている公衆電話についてNTTはこのほど、2031年度までに約3万台へ削減する計画を発表した。国の設置基準緩和を受けた方針で、鹿児島県でも7割ほどの削減が見込まれる。携帯電話の普及に伴い利用者は少なくなっているものの、災害発生時や携帯電話の通信障害などの際にはまだまだ使用されることが多い公衆電話。奄美群島で比較的多く設置されている奄美市名瀬の市街地では「そもそも設置場所を知らない」「なくなると困る人は一定数いるはず」など、さまざまな声が聞かれる。NTTは撤去対象となる公衆電話の選定を進めるとともに、利用者に設置場所の確認を呼び掛けている。

 

NTTなどによると、公衆電話の利用件数は2000年から21年までの間に98%、設置台数も81%少なくなった。一方で、国内の携帯電話個人保有率は81%(19年現在)に上り、主な連絡手段はSNS(インターネット交流サイト)などに移行している。

 

こうした状況を受け、総務省は今年4月、公衆電話1台当たりの設置面積基準を緩和。具体的には、市街地では従来の500メートル四方に1台から1キロ四方に1台へ、それ以外の地域では1キロ四方に1台から2キロ四方に1台へとそれぞれ変更した。

 

基準緩和に伴い、NTTは22年度から毎年7千~9千台の公衆電話を撤去し、31年度までに約7万9千台を削減する方針だ。新たな設置基準に従えば、鹿児島県では約1500台(21年度末現在)から約500台へ、3分の1まで減る計算となる。

 

総務省は一般公衆電話の設置基準緩和と併せて、災害時の連絡手段確保を図り、国が維持費を一部負担する「ユニバーサルサービス」の対象に、各自治体の公共施設や集会場、学校などに設置されている「災害時用公衆電話」を追加した。

 

公衆電話の位置を確認できるNTT検索サイトで奄美群島の設置状況を調べると、比較的多いのは人口が集中する名瀬市街地。それだけに、台数が削減された場合の影響も他地域に比べ大きくなると予想される。公衆電話について住民に話を聞くと、さまざまな声が聞かれた。

 

店先に公衆電話が設置されている商店の女性店員は「多くはないけど毎日使う人はいて、長電話をする姿も見掛ける。携帯電話を持っていない高齢者などにとって、(公衆電話削減で)外出中の連絡手段が減る不安は大きいのではないか」と懸念する。

 

今月2日に発生した携帯電話大手KDDIの大規模通信障害では、奄美でも「携帯電話で通話ができない」といった影響が出た。

 

緊急時の通信手段として必要性が示される公衆電話だが、一方では、必ずしも利用に結びついていないケースもある。

 

「(緊急時に公衆電話が)近くにあればいいが、探す余裕はない」。出産を間近に控えた30代女性=同市名瀬=は、いつ出産の予兆が始まるか分からず、すぐに病院と連絡が取れない状況に不安を抱いたが、公衆電話を使う考えはなかったという。卸売業者の男性は「仕事で使う携帯電話が不通になって大変だった」としながらも、公衆電話の設置場所については「よく分からない」と話すにとどまった。

 

NTTは今後、エリアごとの設置台数や利用頻度などを基に撤去する公衆電話を選定し、対象機への貼り紙などで周知する。国の補助で災害時用公衆電話を維持しながら、利用頻度が高い場所の公衆電話は残すなどして利便性を維持するとしている。