ノヤギ、ソテツ害虫被害に懸念 管理計画改定へ議論 世界自然遺産地域連絡会議 奄美市

2025年02月13日

自然・気象

世界自然遺産地域の管理について活発な議論を交わした「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産地域連絡会議」の会合=12日、奄美市名瀬

「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島世界自然遺産地域連絡会議」の2024年度会合が12日、奄美市名瀬のアマホームPLAZAであった。構成団体などから約100人(オンライン含む)が出席。環境省から4地域の全体的な管理計画や、種の保全状況といったモニタリング計画の改定案が示されたほか、奄美大島の首長からはノヤギやソテツのカイガラムシ被害など、島内で広がる懸案事項などの問題提起もあり、関係者間で活発な議論が交わされた。

 

同会議は環境省、林野庁、鹿児島県、沖縄県、地元市町村で構成され、遺産地域の適正な管理に向けて世界自然遺産登録前の2016年に設置された。各地域に部会があるほか、管理に当たっては専門家で構成される科学委員会からの助言も受ける。

 

会合で環境省は、現状で整合性が取れていない4地域全体の管理方針「包括的管理計画」と遺産地域の自然環境や人為的影響などを監視する「モニタリング計画」の改定案を提示。モニタリング計画については、20ある指標を見直し、新たに▽希少ネズミ類の生息状況▽傷病救護および死骸回収の件数と原因▽ノヤギの生息情報―などを指標として追加する案を示した。両計画は来年度中に改定作業を終える予定。

 

奄美大島の首長から「島内5市町村でノヤギの駆除事業を行っているが捕獲が進まずどうすればいいか」「カイガラムシによるソテツの被害が広がっているが国の議論はどうなっているのか」などの質問があった。環境省はノヤギについて「発生源の特定も含めた対策が必要」と回答。カイガラムシについて「遺産の価値である生物多様性そのものには影響ない」とし同省としての対策は行っていないとした。一方、龍郷町や鹿児島県からは対策の状況や、効果が高い薬剤の早期導入に向けて国に働き掛けをしていることなどが示された。

 

同省から23年度のモニタリング結果が示され、「保護管理の見直しが望ましい」とするB評価には▽(希少種の)交通事故の発生(全地域)▽(シロアゴガエルやアメリカザリガニなど)外来種(徳之島)▽飼い猫の管理状況(全地域)―などが挙がった。

 

このほか民間団体や市町村による自然保護活動や持続可能な観光に関する取り組みなどが共有されたほか、宇検村からは民間の寄付金を活用したアマミノクロウサギの交通事故対策事業や、今年同村で開催予定の「国際サシバサミット」のPRなどもあった。