ウミガメ産卵大幅減 漁獲で餌減少、混獲も懸念 海洋生物研21年調査 奄美大島

2022年01月19日

産卵のため上陸したアカウミガメ=2021年6月、奄美大島(興克樹さん撮影)

奄美海洋生物研究会(興克樹会長)は18日までに、奄美大島のウミガメの上陸・産卵に関する2021年の調査結果をまとめた。産卵回数は326回と前年(546回)の約6割にとどまり、調査を開始した12年以降で19年(293回)に次いで少なかった。特に減少が顕著なアカウミガメについて、同会は餌場である東シナ海で、活発な漁業活動に伴う餌資源の減少や、混獲の影響に懸念を示した。

 

21年の産卵回数の内訳はアカウミガメ59回(前年111回)、アオウミガメ241回(同335回)、種不明26回(100回)。2種ともに減少したが、特にアカウミガメは減少傾向が続き、過去最少だった。同会は「ウミガメの生息数の増減は中長期的な分析が必要。今後の推移を注視する必要がある」としている。

 

日本ウミガメ協議会の松沢慶将会長によると、アカウミガメの産卵回数は全国でも13年をピークに減少している。ウミガメは生まれて40年ほどで産卵できるようになるが、国内で生まれたアカウミガメが回遊して成長する北太平洋やメキシコ沿岸で80年代ごろ、活発に行われていた漁業に伴う混獲の影響で、近年日本に戻って産卵するアカウミガメが減少しているとみられるという。

 

北太平洋やメキシコ沿岸の漁業は90年代以降、ウミガメ保護のため厳しく規制されるようになったが、日本沿岸では混獲被害が続いているとみられ、松沢会長は「水産庁などによる混獲防止の技術開発は進んでいる。社会全体で対策を加速する必要がある」と述べた。

 

ウミガメの産卵回数の減少に伴い、リュウキュウイノシシによる卵の食害も21年は81件と前年(124件)より減ったが、全産卵巣に占める食害の割合は24・8%と前年(22・7%)を上回った。地区別では瀬戸内町与路島のアシニ地区22件、請島のケラジ地区16件、ヤンマ地区15件で特に多かった。