クロウサギ事故、最多に 9月末で89件、昨年上回る 夜間運転、十分注意を 奄美大島、徳之島

2022年11月02日

アマミノクロウサギ交通事故確認件数(2022年は9月末現在)

環境省は1日、世界自然遺産の奄美大島と徳之島で、国の特別天然記念物アマミノクロウサギのロードキル(交通事故死)が今年9月末までに計89件発生し、昨年1年間の78件を上回り、過去最多となったと発表した。両島とも近年ロードキルが急増し、歯止めがかからない状態。国道や県道など、住民が日常的に利用する道路でも多発しており、同省は「通勤、通学などで夜間に運転する際は、十分注意して」と呼び掛けている。

 

交通事故が増加しているアマミノクロウサギ

アマミノクロウサギは両島の固有種。環境省のレッドリストで絶滅危惧ⅠB類。近年、野生生物を襲うマングースの駆除や、野生化した猫(ノネコ)の捕獲など、保護対策が進んで生息状況が回復したことで、ロードキルが増えたとみられる。

 

環境省によると、両島では2015年以降、ロードキルの増加傾向が続き、20年に70件、21年に78件と急増。島別では、今年9月末時点で奄美大島68件、徳之島21件。これまでにそれぞれ最多だった61件(奄美大島、21年)、19件(徳之島、18年)をともに上回った。

 

特に事故の増加が目立つのは、奄美大島では▽国道58号の県道85号(湯湾新村線)との分岐点▽瀬戸内町の町道網野子峠線▽県道85号▽湯湾岳(大和村、宇検村)周辺の林道など。徳之島では▽県道629号(花徳浅間線)の徳之島町手々~金見間など。

 

奄美・沖縄が世界自然遺産に登録された昨年7月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会は、クロウサギなど絶滅危惧種のロードキルを課題の一つに挙げた。奄美大島と徳之島では、クロウサギが道路に出て来ないように、事故が多発するエリアで侵入防止柵を増やすなど、対策の検討が進む。