アマミノクロウサギ、伊仙町で7年ぶり確認 定着、生息域拡大か
2022年04月12日
世界自然遺産
環境省徳之島管理官事務所は11日、伊仙町の犬田布岳で国の特別天然記念物・アマミノクロウサギを確認したと発表した。同町での確認は2015年以来7年ぶり。町内に定着している可能性もあり、関係者からは保護の機運の高まりを期待する喜びの声が上がった。一方、別の地点ではネコの姿も撮影されていることから、同事務所は「希少野生動物をネコの捕食から守るためにも飼い猫の適正飼養を徹底してほしい」と呼び掛けている。
アマミノクロウサギは奄美大島と徳之島だけに生息し、環境省のレッドリストでは近い将来に野生での絶滅の危険性が高いとされるⅠB類に分類されている。03年時の推定では奄美大島に2000~4800匹、徳之島で約200匹生息しているとされており、イヌやネコによる捕食や、交通事故死などによる個体数の減少も懸念されている。
前回同様、環境省が12年度から行っている自動撮影カメラによる調査で撮影に成功した。1月4日から3月3日まで犬田布岳に計10台のカメラを設置したところ、犬田布岳山頂付近と約700㍍離れた南側斜面の2地点で撮影した計15枚の写真でアマミノクロウサギが確認できたという。
徳之島のアマミノクロウサギは北部の天城岳と中央部の井之川岳の周辺を中心に生息しており、伊仙町での確認は04年に調査を始めてから2度目。15年に確認されたアマミノクロウサギは、町境の犬田布岳山頂で確認された1匹のみで、その後の調査では確認されず、付近で定着している確証は得られなかった。
今回撮影されたアマミノクロウサギは性別が不明だが成獣とみられる。写真では同一個体なのかは判別できなかったが、福井俊介管理官は「撮影日の1日後にもう1カ所でも撮影されている。あまり行動範囲は広くないとされているので1日で700㍍も移動したとは考えにくい。複数の個体が伊仙町内で生息している可能性もある」と見解を述べた。
同事務所は今後も自動撮影による調査を継続していくという。福井管理官は「犬田布岳周辺も他の生息地と同様に沢や餌があり生息には適している。複数の個体や、子育てする個体が確認できれば定着しているという確証につながる」と話し、「島内全3町で生息が確認できたら、改めて島一丸で自然を守っていこうという機運が高まるのではないか」と期待を込めた。
島内で環境保全活動に取り組み、環境省の調査に協力しているNPO法人「徳之島虹の会」の美延睦美事務局長は「これまでもデータの回収や確認に協力してきたがずっと空振り状態だったこともあり、今回アマミノクロウサギの写真を確認した瞬間は皆で万歳した。もし生息数が増加して生息域が広がっているとしたら関係者のこれまでの取り組みが実を結んできているということ」と笑顔を見せた。