ユネスコ報告書案示す 遺産区域にロードキル防止柵 クロウサギ保護へ対策強化 地域連絡会議・奄美大島部会
2022年07月14日
世界自然遺産
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界自然遺産地域連絡会議の奄美大島部会が13日、オンラインで開かれた。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会が要請した課題4項目の報告書案が示された。奄美大島で急増するアマミノクロウサギなどのロードキル(交通事故死)対策強化へ、事故が多発する世界遺産区域で、道路への侵入防止柵設置の検討を進める方針を盛り込んだ。
昨年7月の奄美・沖縄の世界自然遺産登録に伴い、世界遺産委員会はアマミノクロウサギなど絶滅危惧種のロードキルを課題の一つに挙げ、事故を減少させるため、交通管理措置の有効性を緊急に見直し、必要な場合は強化するよう要請。今年12月1日までにユネスコへの報告を求めた。
環境省によると、奄美大島ではクロウサギのロードキルが2020年に50件、21年に59件と2年連続で過去最多を更新している。
関係機関と専門家で構成する特別チームがまとめた報告書案では、ロードキル対策について「有効性のある対策が不十分な地域もみられた」として、奄美大島や徳之島でクロウサギなどが道路に出てこないように、侵入防止柵を設置するなど、対策を強化する方針を示した。
具体策として、希少種が多く生息する湯湾岳(大和村、宇検村)に続く大和村の村道マテリア線で21年9月に導入した侵入防止ネットの事例を盛り込んだほか、世界遺産区域が含まれ、事故が多発している網野子峠(瀬戸内町)周辺や、湯湾岳方面と網野子峠方面を結ぶ県道85号(湯湾新村線)で侵入防止柵の設置を検討する方針。
地域連絡会議は、行政や地元団体など関係機関の調整や合意形成を図る目的で設置され、奄美・沖縄の4地域にそれぞれ部会を設けて遺産地域の適正な管理の在り方を検討している。同日の奄美大島部会には約60人が参加した。
自然保護関係者から、大和村の侵入防止ネットについて「交通事故を防げているか実証できているか」と質問があり、環境省の担当者は「自動撮影カメラを設置してクロウサギが侵入できないかどうかをモニタリングしている。検証には長期的にみる必要がある」と述べ、効果検証を進める考えを示した。