請島で大人の世界遺産講座 瀬戸内町
2021年05月31日
世界自然遺産
瀬戸内町水産観光課世界自然遺産せとうち町対策室主催の2021年度第1回大人の世界自然遺産講座が30日、同町請島であった。受講生、スタッフ約30人が参加。「幻の花」と呼ばれる絶滅危惧種のウケユリを観察したほか、標高356㍍の大山・ミヨチョン岳登山にも挑戦し、地元の自然の豊かさや雄大さを体感した。
瀬戸内町では、子どもを対象に同じテーマの講座を毎年開催している。大人向けの講座は、地元住民にも広く自然保全の取り組みに関心を高めてもらう目的で2019年に初開催し、今回が2年目。講師は環境省奄美野生生物保護センター国立公園保護管理企画官の山根篤大さん、自然観察指導員の國宗弓穂さんらが務めた。
参加者は、池地公民館で奄美の野生動植物について講義を受けた後、大山中腹のウケユリ自生地に移動。地元のボランティア団体「みのり会」から、ウケユリの保護や管理活動について話を聞いた。
この後、2班に分かれて登山を開始。道中は講師陣や、みのり会メンバーが山中で観察できる希少なランや昆虫などについて解説した。
ウケユリは同島や奄美大島周辺の島々の限られた岩場などに自生する、純白の花弁と強い芳香を持つユリ科の植物。森林開発による生息環境の悪化などで急速に個体数が減少し、環境省のレッドリストでごく近い将来絶滅の危険性が極めて高い「絶滅危惧種ⅠA類」に分類されている。
この日はウケユリのほか、ナゴラン(絶滅危惧種ⅠB類)やカシノキラン(絶滅危惧種Ⅱ類)、サクラランなどの季節の花々も見ることができた。参加者は双眼鏡で花を観察したり、カメラやスマートフォンで写真に収めたりしていた。
ミヨチョン岳頂上には1時間ほどで到着し、一行は雄大な景色を楽しみながら昼食を取った。同町手安の前田紀子(すみこ)さん(75)は「登山はしんどかったが、登ったかいがあった。ウケユリも見られ、山頂で食べる弁当もおいしかった」と笑顔を見せた。
同対策室の重村一人対策室長(55)は「希少なウケユリの観察もでき、希少種保護の意義や取り組みについて楽しく学んでもらえたと思う。今後も大人を対象に年2、3回実施したい」と話した。
環境保護と安全のため、大山の入山には町教育委員会への申請とみのり会の同行が必要。